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沼田法人会会長 金井 敬司さん(沼田市下久屋町)

【略歴】利根農林高卒。元沼田市教育委員長(2期)。現在、沼田市ソフトボール協会会長、日本電信電話地区協会会長、奥利根高原連合そばの会会長を務める。

ボーイスカウトの復活



◎子育て群馬をめざして

 このたび、沼田中央ロータリークラブの年間奉仕活動の大きなテーマとして、かつて全盛を極めた「ボーイスカウト」を実に半世紀ぶりに復活させ、先月、日本ボーイスカウト沼田第一団として盛大に発会式を行った。このことは、現在の少子高齢化社会の中での新たな青少年育成の分野での期待は大変大きいものがある。広く郡市民も注目する一ページに、これを発起され、物心ともに支援をされたロータリーメンバーに大きな拍手を送りたい。

 私自身も職業人の中から選ばれ、三十有余年のロータリーメンバーでもある故、ひとごとでない感激の限りだ。まして私自身、小中学生時代に戦後のすさんだ貧しい中、多感な時代をボーイスカウトの一隊員として、体験教育を受けた。今の六十―七十歳台を迎える地域のけん引者の大半がこの経験の上に、今日があるといっても過言ではない。貴重な活動であったことに深い感謝の念である。

 ボーイスカウトの起源は古く、現在、世界百五十一カ国に二千八百万人、日本国内では三千の数の団が活動、二十万人余の団員が各地に羽ばたいている。県内では、五十七団、三千人の団員が活動中だ。また、本県は往年の全盛時、国内に誇る活動、普及実績県であったと聞いている。思えば、沼田市出身でボーイスカウトの先駆者、星野宏さんの存在がある。戦後の荒廃の中、星野さんは英国での商人生活から帰国して、海外での貴重な体験を基に私財を投じてこのボーイスカウト運動を提唱された。自ら率先して、強力な指導者を育成された故人に、この発団を報告できることに大きな喜びを感じている。次に、ロータリーメンバーの先輩、塩野栄一さんの存在がある。塩野さんは、群馬の誇るボーイスカウトの草創期に、利根沼田に二十を数える隊(団)から県連盟の事務局長に就任された。最大の活動貢献者であった塩野さんが、ロータリークラブとしての復活実現への真の提唱者であったことは、大きな評価に値いする。

 もとより、ロータリークラブは職業人の集りで、各方面での奉仕活動が目的である。組織内に青少年委員会、子供委員会など青少年育成に当る仕事が設けられ、地域を柱に活動している。単に一ロータリークラブの英断で終わらせずに、地域内の各種団体、グループが真の青少年育成に向った共通理解と支援行動が求められる。ましては「子育て群馬」を唱える地域として、これぞ次世代へ果さねばならない住民義務とも思える。今でも、このボーイスカウトの洗練された教育が懐しく感じられる。「三指の礼」をもって、スローガンの「そなえよつねに」、そして「一日一善」の実行など、まさに健全育成を願う体験活動をもって、真の生きる力をゆがめずに育てることが大事だ。

 その精神は「人のお世話をするように、人のお世話に感謝して、報いを求めぬように」というボーイスカウトの教えが物語っている。現在の画一的な育成路線の問題点の是正のほか、週五日制など学校現場へのさまざまな警鐘も出ている。教育全般を考えた場合、新たな指針として、このボーイスカウト活動の真の理解とよき指導者の育成にこぞって手を差し延べたい。新たな青少年育成活動が大きな輪となることを期待し、成功を心より念願する一人である。

 全国組織の法人会活動の柱にも社会貢献があるが、青少年の健全育成という観点からも、活動の道を考えてもいいように思う。

(上毛新聞 2003年6月29日掲載)