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高崎捺染協同組合理事長 清水 英徳さん(高崎市昭和町)

【略歴】高崎高、立教大理学部化学科卒。清水捺染工場代表取締役。元ライオンズクラブ複合地区(本県など5県)管理委員長。染色の全国大会で通産大臣賞をはじめ中小企業庁長官賞など受賞多数。

科学立国



◎研究者の環境改善を

 二十世紀における科学の進歩は、過去の世紀とは比較にならないほどの大きなものがあった。まさに「知の爆発の世紀」と言っても過言でない。一九〇〇年以前の物理学を古典物理学、一九〇〇年以降を現代物理学と呼ぶが、特に現代物理学の発展はすさまじいものがあった。

 一九〇五年、アインシュタインの特殊相対性理論の提唱は、それ以前の理論を全く変えた新しい発見であり、二十世紀の幕開けとも言うべき大きな変革をもたらした。その後、原子物理学の発展により原子エネルギーの研究が始まり、エネルギーに関する分野が飛躍的な進歩を遂げた。その後、原子爆弾が開発され、第二次世界大戦ではわが国に多大な被害を及ぼし、多くの貴い生命が奪われたことは記憶に残る不幸なことである。それがきっかけで、アインシュタインは核の恐ろしさを知り、平和主義者になったといわれている。

 しかし、原子力の平和利用も、多方面で行われていることは、ご存じのとおりである。ビッグバンにより星が誕生し、ブラックホールによって星が消滅するという、宇宙の仕組みが判明した。人工衛星の開発により、月への軟着陸を可能にし、数多くの衛星が飛び交い、宇宙の中継所と言うべき宇宙ステーションを建設中であり、また、火星の探査機の打ち上げ等、宇宙の研究が徐々に進んできている。

 また、バイオテクノロジーの発達により、DNA遺伝子の解明が進み、医療の分野で著しい貢献がなされており、さらに、コンピューターの進歩により、目まぐるしい情報化社会が誕生した。まさに、二十世紀は数え上げれば枚挙にいとまがないほど、たくさんの発見や発明があった。

 先日、利根川進先生(ノーベル賞受賞学者。分子生物学を免疫学に導入し、その研究を三十代に確立し十年後に受賞の対象となった。哲学・心理学・精神的能力を生物学に導入し、脳細胞ネットワークの研究を今も続けておられる)が日本の研究の施設や大学のシステムを大変憂いておられた。

 従来からあるわが国の大学の序列による教授・助教授・講師・助手のシステムの改革を行い、優秀な研究者をどんどん発掘。それぞれ責任あるポジションにつけ、持てる可能性を存分に発揮させて、自由に研究に没頭できる機会をつくる。さらには大学をアメリカ式に民営化を進め、それぞれに評議会を設けて検討を重ねる。必要に応じて国が財政面の援助をし、各大学に独自性を持たせて、科学分野を活性化することが必要ではないだろうか…。

 優秀な研究者が、海外に流出するのを食い止め、科学立国を創造したら良いと思う。ちなみに、アメリカのノーベル賞受賞者は各部門を含めて二百七人もいるが、わが国はたったの九人である。なかでも理系の受賞者は、ほとんどがアメリカで研究をした人たちばかりである。

 わが国でも、これからは研究者にとってより良い環境をつくることが必要であろう。日本人は元来素晴らしい素質を持った国民である。さらなる頭脳立国を目指して頑張れば、二十一世紀は希望の世紀といえるのではないだろうか…。

(上毛新聞 2003年7月5日掲載)