視点 オピニオン21
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(株)新進技術顧問 遠藤 悦雄さん(前橋市昭和町)

【略歴】富山市生まれ、東京教育大卒。1956年、新進食料工業に入社し、94年から技術顧問。一昨年、技術功労部門で農林水産大臣賞を受賞。現在、発明協会群馬支部前橋分会の副会長も務めている。

水と酸素の時代



◎自然の大切さを痛感

 前回は食の変遷を見てきましたが、今はまさに水と酸素の時代といえるでしょう。地球の水と酸素の存在を考える時、生きるもの(人間、動物、植物)すべて、太陽と同じほど恩恵を受けて、生き続けています。しかし、これほど命の恩人でありながら、感謝さえしていません。時に水は洪水、旱魃(かんばつ)と化し、自然の猛威を振るうこともありますが―。

 水が凍って雪や氷化してオリンピック会場として名をはせることもあり、また、山紫水明の言葉通り自然の風景と切り離せません。

 一方、水はよき湧水が求められ、醸造業(酒、ビール等)、飲料メーカーが昔から繁栄し、最近では「おいしくない水道水」に代わって、ミネラルウオーターが商品として世界的に伸びています。都会で「まずい水」を飲んで、「汚れた酸素」を吸って生活している人たちに幸せがあるだろうかとさえ言われてます。

 春の声が聞こえてくるころになると、立山連峰の雪解けの水が富山湾にわき出し、その真水を求めて全国でも珍しいホタルイカが富山県滑川に風物詩を醸し出します。

 最近、いたる所で医学的に水の効用が論じられています。人間の体の70%は水で構成されており、絶え間なく細胞が新陳代謝し、新しい水分と交換しています。水が人間の体を支配しているといえます。体をめぐる血液にしても、主成分は水であり、血液がドロドロになると脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞等に陥りやすいともいわれています。

 運動選手が絶えず水を取るのは、不足する水分の補給であり、活力の源なのです。ぐったりした花卉(かき)に水をやれば、瞬く間に生き返るではありませんか。酸素吸入すれば、人間も生き返り活性化します。不思議です。また、身体の不純物・代謝で、不必要になった物質を尿とともに排出してくれます。風呂に入る前の一杯の水は、脳溢血(いっけつ)の予防に、寝る前の一杯は便秘を助けるといわれています。

 こうしたことから、悪い水道水でなく、よい水を絶えず飲み、細胞を活性化させ、習慣病を撃退したいものです。最もお金のかからない健康法です。また、自動車の排気ガスで汚れた空気を呼吸していると、生活習慣病と深い関わりのある活性酸素の蓄積が多くなるので、緑が多く、新鮮な酸素を多く取ることが大切になります。

 今後の水の問題点については、新聞やテレビでも報じられており、家庭への水道配管の鉛管の溶出問題、農薬の流入、浄水場で使用される塩素と有機物の反応物トリハロメタン(多いと肝臓ガンの原因になる)と多くの問題点があります。いかによい水道水を得るかが、今後の大きな課題であります。

 また、人間は生存するために呼吸して取り入れている空気中の20%の酸素を活用しているが、一部が活性酸素に変わり、時には体内で有効に働いたり、生活習慣病と深く関わっていたりしているといわれており、毎日、抗酸化食品を摂取して撃退しましょう。ビタミンC、ビタミンEやβ(ベータ)カロチン、ポリフェノールを多く含む食品、お茶に含まれるタンニン等が有効です。今後、自然を取り戻すことが、いかに大切かを痛切に感じる次第です。

(上毛新聞 2003年7月20日掲載)