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群馬陸上競技協会副会長 平方 亨さん(渋川市南町)

【略歴】渋川高、早大教育学部卒。現役時代は400メートル障害を中心に国体などで活躍。長野原高、桐生高教員などを歴任。日本陸上競技連盟国際委員長。四月から同連盟に出向。

アマチュア



◎競技者の肖像権の問題

 私は日本陸上競技連盟に関係して十六年になりますが、その間に「アマチュア」という言葉で世の中への話題提供が幾つかありました。陸上界でいうと有森裕子が最初の出来事で、最近では高橋尚子です。今回はその「アマチュア」という日本における基本的概念を述べたいと思います。

 そのものズバリ言いますと、「アマチュア」ということは、競技者の肖像権が日本オリンピック委員会にあるということです。そしてオリンピックに出場するには、日本オリンピック委員会に属しないと派遣対象にならないのです。よくプロ野球選手がオリンピックに出場する際に話題になるのもそういうことなのです。プロ野球やサッカーJリーグやプロテニスが代表的存在でしょうか。自転車競技もありましたね。要するに肖像権の問題です。プロ選手の肖像権は本人が持っていて、アマチュア選手の肖像権は日本オリンピック委員会が持っているということです。

 わかりやすいように例をあげて説明しましょう。小中高校生の大会の観客席は父母でにぎわっています。そしてビデオやカメラをもってわが子を写しています。その肖像権が日本オリンピック委員会にあるということです。より具体的な例をあげましょう。A社で働いている選手がA社の広告とか、会社パンフレットとか、会社カレンダーなどに写真などは掲載できません。掲載されるとアマチュアでなくなるのです。その会社で働いているので収入とは無関係で、一般的にいわれているプロ活動ではないのですが、理由は肖像権が日本オリンピック委員会にあるからです。どうも、一般的に考えられているプロとアマの違いではないのです。

 どうしたら選手のそのような活動が可能かというと、日本オリンピック委員会のスポンサーと同業種ではなく、同委員会の許可を得てA社が同委員会に料金を支払えばできます。A社とすると、自分の雇用している選手を自分の会社のことで使って、料金を日本オリンピック委員会に支払わなくてはならないシステムなのです。くどいようですが、肖像権は選手本人が持っていないのです。そのことがアマチュアであることなのです。小中高校生の父母が、自分の息子、娘の肖像権が本人にないって思っているでしょうか?

 しかしこのシステムも、すべて悪いわけではありません。ここで得た収入が、オリンピック選手の育成強化に役立っていることはもちろん、各種スポーツイベントにも役立っているのです。人気スポーツはそれなりに運営強化できますが、競技によっては苦しい団体も多々あります。そのような団体も強化、運営できるように、広く有効活用されているのです。ただし、個人的考えを言えば、各団体は個々で努力するべきであり、まして個人の肖像権までも規制することは法律上できないと思います。

 今度、スポーツ選手の出ているテレビコマーシャルや広告を見たら、そのどこかに日の丸の下にオリンピックマークのある日本オリンピック委員会(JOC)のマークを確認してみてください。

(上毛新聞 2003年8月8日掲載)