視点 オピニオン21
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トレーニング指導士 大谷 博子さん(桐生市宮本町)

【略歴】日本女子体育短大卒。3年間、中学校で体育教諭を務めた後、家庭に入り子育てしながら文化活動を始める。1977年児童文学の部門で県文学賞、81年には日本児童文芸賞新人賞を受賞。

水泳合宿



◎集団生活で貴重な体験

 私たちのスポーツクラブでは、夏休みの行事として、勢多郡東村の総合運動公園の施設を利用して毎年、水泳合宿を行っています。

 今年も冷夏にかかわらず、たくさんの子どもたちが参加し、それをサポートする指導陣や保護者、みんなで合宿を楽しみました。

 泳ぎの到達目標は子ども一人一人違っていても、三日間の集中練習は水に慣れ親しみ、確実に泳力を高めます。

 つまずきが発見され、矯正された時など、驚くほど上手になっていきます。

 「クロールの息つぎができたら、二十五メートルいっちゃった!」

 「平泳ぎの脚の蹴りが直ったら、三百メートル泳げたよ!」

 得意満面のうれしい報告に、指導者の意気も上がります。

 水泳合宿は「寝食をともにしながらの集団生活」。従って、協力、協調、我慢といったことがついてまわります。

 そういう意味では、普段、家庭では得られない「貴重な体験」の機会が、山のようにころがっているともいえます。

 小さな一年生たちは親から離れ、生まれて初めて経験する合宿です。困った出来事が次々に登場してきます。

 身の回りの始末、探し物…。たった一組の布団敷きでさえ、悪戦苦闘しています。

 「どうしょう…」の気持ちが、上級生の言動をまねたり、知恵を働かせ、困りごとを対処できるようになるのです。

 時には、共同作業も生まれます。

 上級生の下級生に対する心配りは、グループの雰囲気を左右し、合宿の成否にもかかわってきます。

 少し前まではやんちゃで、みんなに面倒をかけていた子が、班長に選ばれました。

 私たちの心配をよそに、その子は自分の持ち味を上手に生かし、班をまとめていました。

 一年生から六年生までの縦割りグループは、まるで小さな家族のようです。

 また、六年生の希望者は、わたらせ渓谷鐵道の大間々駅から合宿拠点の東村まで、自転車で往復します。

 渡良瀬川を見下しながら、八木原根利線、黒保根村から花輪、東村の山道へと入っていきます。

 登って下って、苦あれば楽ありの繰り返しです。流れる汗に体力の限界を感じつつ、やがて訪れる風を切る爽(そう)快感…。

 ペダルをこいでから二時間半。草木ダムが両手を広げて待っています。「ヤッター!」。冒険ともいえる二十キロのサイクリング。達成感バッチリの楽しい挑戦です。

 天候には余り恵まれない水泳合宿でしたが、「上手になったね」「お風呂でゆっくり温まりな」「えらいねえ」など、プールでも国民宿舎でも、子どもたちは温かい言葉をたくさんかけてもらいました。合宿体験は、確かな心身の財産になったことでしょう。

(上毛新聞 2003年8月23日掲載)