視点 オピニオン21
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(株)新進技術顧問 遠藤 悦雄さん(前橋市昭和町)

【略歴】富山市生まれ、東京教育大卒。1956年、新進食料工業に入社し、94年から技術顧問。一昨年、技術功労部門で農林水産大臣賞を受賞。現在、発明協会群馬支部前橋分会の副会長も務めている。

リニア搭乗体験



◎日本の鉄道技術に驚嘆

 昨年五月、発明協会前橋分会の研修会で、世界に誇る「夢の超電導磁気浮上式・山梨リニア実験線」に運よく搭乗体験することができ、日本の鉄道技術の優秀性に驚嘆し、不況というトンネルを抜け切った気持ちだった。

 現在の新幹線は、一九六四年の東京オリンピックに向けて設置され、創業以来、無事故で技術的にも敬服しているのに、リニアは何と時速五○○キロで無人運転、将来東京―大阪間を一時間で走行する見込みという。すでに走行試験、並びに安全システムにおける総合評価で二〇〇〇年三月に「実用化に向けた技術上のめどが立った」とされている。

 二〇〇〇年四月以降は、高速での走行が繰り返され、信頼性、耐久性の検証が深められている。またコストを低減する技術開発が積極的に行われている。

 しかし日本では、七兆円もかかるので、いつ実現するかは未定である。

 実際に試乗したリニアの車体は、東海道新幹線「のぞみ」よりさらに先頭車両は流線形で、車内は四人掛け。窓は小さく、小型飛行機を思わせる。シートベルトはなく、最初はゴム車輪で走行し、時速一○○キロになった時車輪が格納される。超電導走行に切り替わり十センチ浮いて時速五○○キロになっても振動がなく、静かなのには驚いた。二十五分間の往復走行だった。

 中国では二〇〇八年のオリンピックに向け、日本のリニアモーターを設置したいとの動きがあったが、日本で開発された最新超電導磁気浮上式リニアモーターには、多くの技術の蓄積と、多くの秘密技術があるため、日本側が簡単には首を振らなかったとのことである。

 中国ではドイツのリニアが上海郊外に三十キロ設置され走行しているが、騒音、振動があり、コストも高いと報じられている。

 上海―北京間千三百キロの設置は、コスト面で新幹線の二・五倍かかるので不可能とされ、日本の新幹線方式が、フランスのTGV、ドイツのICEの高速列車等もある中、急に浮上してきた。日本側は「新幹線の技術が飛躍的に発展し、リニアとの差も縮まって、経済性に優れ、高速・多量・高密度輸送で中国には最も適している」と売り込みに熱弁を振っている。もし決まれば、日本の経済効果がおのずと得られるものの、中国は世界の先端技術を導入し、最終的には国産化を進めると、恐れ、警戒する人々も多い。

 もっとも、中国の鉄道技術も決して低いわけではない。国産の流線形列車「中華ノ星」が秦皇島(河北省)―瀋陽間で、時速三二一・五キロを記録したと報じられている。また、上海―杭州(浙江省)にリニアを採用する計画も浮上している。

 北京―上海にリニヤと新幹線をそれぞれ設置した場合の比較データも公表されている。リニアは建設費三兆八千億円、時速四五〇キロ、所要時間三・五時間。新幹線はそれぞれ一兆五千億円、三五○キロ、四・五時間。日本の技術の新幹線が、中国を走る日がやってくるのだろうか。

(上毛新聞 2003年8月26日掲載)