視点 オピニオン21
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会社役員 猪俣 芳浩さん(館林市大手町)

【略歴】福島県出身。明治学院大学法学部卒、大学院経済学研究科修了。都内でフリーの文筆業。結婚を機に館林市へ。2000年から館林市の「まちづくりを考える研究グループ」に参加。日本NPO学会会員。

ミニFM局



◎期待したい市民の参加

 平成十五年九月、私の住む館林市大手町にミニFM局が開局する予定だ。FM局といっても「J―WAVE」や「NACK5」の名称で親しまれる一般FM放送や、平成四年の法改正で誕生し全国に百六十を超えるFM局のあるコミュニティーFMよりも受信エリアがさらに狭く、当面は半径二百メートル程度となるようだが、対象地区では早くも期待が高まっている。

 京都では今年の三月三十一日、都心(洛中)を放送エリアとするコミュニティーFM局「京都三条ラジオカフェ」が開局している。このFM局は類別から「コミュニティーFM」に位置づけられているが、京都というまちだけに対象となるエリア内のリスナーの数は約百万人を見込んでいるという。

 また、このFM局を運営するのは特定非営利活動法人京都コミュニティ放送で、「NPO法人が運営する日本初のFM局」として内外から注目されている。放送内容は地域情報をはじめとして音楽やイベントなど一般放送局では扱いきれない情報をキメ細かく扱い、文字どおり「市民の市民によるFM局」を実践しているようだ。

 インターネットで関連サイトをのぞいてみると、日本を代表する古都である京都であっても、近年は伝統産業の衰退、商店街の空洞化、人口減少と高齢化の進行、町並みの急速な変貌(ぼう)など深刻な問題に直面し、かつてのにぎわいを失いつつあるという。また、このことが京都の地盤沈下の要因ともなっている、と書かれている。

 軌を一にして館林と京都で動き出したFM局開局の動きであるが、市民の市民によるFMというコンセプトや中心市街地活性化の課題など、サイズの差こそあれ共通する部分が多くあるように感じる。また、地域コミュニティーの空洞化などは全国的な問題ではないか。

 一般FM局やテレビといった通信媒体や新聞や雑誌に代表されるような紙媒体は日本中に広く普及し、そこから発信される情報を知ることは社会生活上不可欠のものになっている。また、近年台頭が著しいインターネットも、世界中のニュースを入手したり、BBS欄への投稿など瞬時に情報を交換できるものとして生活全般の中でメディア(媒体)というよりもツール(道具)化していると言える。

 生活や仕事の上で欠かせない各媒体ではあるが、個人的にひとつの疑問を持っていた。それは、不可欠の情報を「誰が? どこで?」作っているのかわからないということだ。情報の作り手をたどれば無論誰かに行き着くはずだが、大量に流され続ける情報の提供者をいちいちチェックすることは不可能だし、とりあえず送られてきた情報を信用して受け止めるほかに方法はない。

 このことは「まちづくり」に関してボランティア参加する前も同様の疑問をもっていた。中心市街地活性化にかかわるさまざまな取り組みや郊外型店舗の進出についても、その企画や予算を「誰が? どこで?」進めているのかほとんど知らないままであった。

 生活に欠かせない情報を「受ける」だけでなく、そうした情報に「参加する」ことは今後の地域コミュニティーの再構築には不可欠ではないか。

 情報のプロである媒体サイドが作ったあるいは収集したものを読み聞きするだけでなく、アマチュアである市民自身が見て感じた生の情報を「送り手」として発信できれば、生きた情報を独り占めすることなく共有できる気がする。「誰が? どこで?」ではなく、「市民が! まちなかで!!」はじめつつあるミニFM局開局に市民参加型のコミュニティー構築とその拠点としてエリア内の人たちが多く参加してくれることに大きな期待を抱いている。

(上毛新聞 2003年8月28日掲載)