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柴山建設代表 柴本 天二さん(草津町草津)

【略歴】長野県延徳村(現中野市)出身。延徳中卒。群馬建築士会理事、吾妻流域林業活性化センター木材利用促進検討部会長、県木造住宅産業協会理事などを歴任。草津温泉の旅館などを多数建設。

コンクリートと生活



◎環境考え見直し必要

 忘れ去られいく伝統的木造住宅と、高層化したくなる近代建築のコンクリートと鉄骨造り。コンクリートは、百年間は硬化を保つと戦後いわれていたが、今は、その期間の計算もままならない。自然環境により、強度、性能もが変わってしまう代物になっている。安全性を強調してはいるが、コンクリートはセメントを造るために石油、石炭など地下資源のエネルギーを消費している。

 コンクリートを固めるために使っている合板、鉄筋・鉄骨なども、みな、さまざまなエネルギーを使っていて、自然にできてくるものは何もない。

 自然環境を守り、自然を愛するならば、もう一度、コンクリート工法を考え直してほしい。コンクリート工法は生物や人間にとって、本当に優しい材料といえるのでしょうか。コンクリート、金属、木材の中で育てた子どものマウスでの実験データーから、マウスの寿命、つまり生存率はコンクリート6・9%、金属41%、木材81%という結果が専門誌に掲載されていた。人の人生を左右するという住宅をどのように考えるか、このような結果から、人はコンクリートの中の生活にはなじまないということが、お分かりになるでしょう。

 そのなじまない所で生活する人、家族、そして家庭環境。マンションなどのコンクリート造りの中で生活する人の安全や健康を調べると、ストレスを感ずる人が多いといわれる。ある日、マンションで生活する私の家族の所へ、孫を連れていった。その家族は階下や隣の住人に絶えず気を使っていた。珍しい所に行けば、走り回りたくなるのが普通の子どもだろう。走り回る子どもをしかっていると、もう隣だか下からの電話があった。驚くばかりである。

 これでは、ヤングママの育児犯罪や少年犯罪などが起きるのも当たり前。考えてみれば「隣に住む人は何をしているのだろう」と首をかしげながら、毎日生活しているのである。

 家族とは「同じ建物に住む夫婦、子どもとつながりのある親子のような人々と生活のできる一つの建物の中の人と人との関係」と辞書に書いてある。そのような家族の生活が大きなコンクリートの建物である、マンションのような所でできるのだろうかと疑問になってしまう。壁一つの部屋で音が響かない、聞こえないように阻止できる建物があるだろうか。配水管から聞こえてくる水の音など、コンクリートの建物には必ずといってよいほど、このような状況が発生する。住宅は周辺の生活環境とともに「一に健康、二に健康、三に安全」と、すべてが安心につながるものでなくてはならない。

 これからは、そのようなことを考える設計者、技能者、技術者が必要なのである。意匠設計は誰にでもできる。使う人が考えればよい。その時、設計者、技能者がアドバイスをしてやればよい。

(上毛新聞 2003年9月1日掲載)