視点 オピニオン21
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県環境アドバイザー 中村 文彦さん(吉井町本郷)

【略歴】日本大中退。ホテル専門学校を卒業後、東京都内の都市ホテルに勤務。1994年、吉井町にIターンして無農薬、無化学肥料による有機農業を実践中。環境問題などに関する講演も行っている。

蓼食う虫も好きずき



◎個性や長所を生かそう

 妻の実家の裏庭にタデが繁茂していました。食いしん坊の私は「蓼(たで)食う虫も好きずき」の言葉に魅せられて、その葉を食してみました。刺身のつまなどに、ほんの少し顔をのぞかせ、薬味としてその存在を知ることはありますが、興味本位でタデの葉のみを食したのは初めてで、その葉の強い辛味の中にも奥深い味わいを感じ、何ともいえぬ衝撃を受けました。

 こんな強い特徴のあるタデの葉を好んで食べる虫もいるように、人にもそれぞれ個性や特徴、長所も短所もあるはずです。いつの世でも人間関係の悩みは尽きず、好き嫌いの好みやウマが合う合わないを含めて、他人への評価は誰も厳しいものがあるようですが、まずは百歩譲って、人の意見や「蓼食う虫」すら受け入れてみると、ものの見方や考え方にも変化が起こり、どんなことに対しても優しさを持てることに気付くのではないでしょうか。

 長所や短所といいますが、そもそも良いとか悪いとか、メリット、デメリットというものすら本当にあるのでしょうか? 人を殺(あや)めることは人として許せないことですが、戦争になれば敵国の兵を多く倒した者は英雄になります。これは極端な例かもしれませんが、同じ事柄でも時により全く評価が違うのはよくあることで、自分の心の持ち方ひとつで良くも悪くも変ることだってあるではないですか。

 どんな生き方や考え方をするのか、主体はあなた自身です。ましてや、あなたの存在を科学的に考えてみると、宇宙的な確率のもとでの存在に気付くはずです。父と母の巡り合いから、その精子と卵子の出会いを考えれば、数百億分の一の確率であなたが存在しているわけです。それだけ貴重な巡り合わせで、あなたの存在は広大な宇宙の中でたった一つのものなのです。そんな、唯一の存在であるあなたには、あなたにしかない役割があると思いますし、生きていく中でうれしいこと、やりたいことを思い切りすることは、誰にも幸せなことだと思うのです。

 「好きこそ物の上手なれ」といいますが、私は自分が思い切りできること、自分がやってうれしいことを、一度きりの人生で思う存分やってみたいと思います。それは誰でもができることではないと思われるかもしれませんが、自分の人生の主人公はやはり自分ですし、なにより宇宙でたった一つの存在なのです。自分の人生のデザインや生き方を決めるのは、やはり自分です。

 誰もが人生を思い切り自分にとってうれしいような生き方をすれば、あなたもあなたの周りも、きっとみんながうれしいと思います。人の短所を批判するより、人の長所をうらやむより、自分の長所を生かそうではありませんか。そして、これを実行することだって、そんなに難しいことではありません。だって、あなたがそう思い、行動しようと決めればよいことなのですから。

 一度の人生、あきらめずに、めげずに、思い切り自分が思うことをやりたい。そして私は、そういう生き方を子供たちに伝えていきたいと思うのです。

(上毛新聞 2003年9月23日掲載)