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県保護司会連合会長 若槻 繁隆さん(伊勢崎市茂呂)

【略歴】大正大学文学部卒。1952年から、保護司、高校教諭として活躍。88年、太田高校長で定年退職。退魔寺住職として前橋刑務所教誨(かい)師を務め、受刑者への説話を続けている。

流行



◎自己を確立してほしい

 昔から女性の髪の毛は命と同じように考えられていたほど、大切なものであるという話を聞いてきていたものであるし、それはもっともであるというように理解していた。もちろん、自身が僧籍にあって短髪か剃(てい)髪をさせられる運命にあったから、そう思っていたのではない。

 とりわけ、昔から女性の髪の毛を「緑の黒髪」とか「髪はカラスの濡(ぬ)れ羽色」などと形容して、美しい髪の毛をたたえていたと思われるのである。しかしながら、昨今の世相はどうであろうか。後ろから頭だけ見ると、どこの国の金髪の外国人かと思いきや、似て非なるおよそ似つかわしくない日本人(?)で、自己陶酔した「おどろおどろ」しい若者たちである。ことによるとそれが自己表現の最たるものと考えてのことかと思うが、頑迷固陋(ろう)な脳細胞の頭でも、もう少し流行に左右されず自己確立をしてほしいと思うことである。

 また、若い女性のスカートが短く、時には腹巻きの長めかと思われるようなものを身につけ、白昼堂々と闊(かっ)歩し、電車の中や駅の階段で見受ける姿は「久米の仙人」ならずとも「空から落ちる」どころではなく、「気を失って、墜落死」するかもしれないような気がする。人は聖人君子ではないから、これでは劣情に負けて、思わず「痴漢行為」に走る者もあろうし、考えようによっては男が試されているのかもしれない。

 聞くところによると、都内にある「女子高校」では「痴漢路線」を避けるために、わざわざ遠回りをさせて通学させているとかということである。かつて聞いたことで、真偽のほどは不明で「眉唾(まゆつば)もの」だが、「景気が悪くなると、スカートが短くなる」とか。景気が先か、スカートが先か分からないが、事実現今の経済情勢はどうにもならないほど悪く、まさにこれとぴったり一致している。なにもこんな流行と一致しなくてもいいのにと思うのではあるが、もしそういう現象が事実であるとするならば、先人の炯(けい)眼には案外面白い含みがあるのかもしれない。

 いずれにしても日本人はあくまで日本人で、決して欧米人ではないことは明白である。にもかかわらず日本人としてのプライドをかなぐり捨てて「猿まね」をしたからといって、欧米人に近づいたことにはならない。自らの「厚顔無恥」を晒(さら)しているだけではないだろうか。もちろん、こうした者を輩出した責任の一端はわれわれ大人たちにもあると言っても過言ではない。私利私欲、党利党略に走り、右顧左眄(べん)ばかりしていて、日本の将来について腹を据えて考えることを忘れていると、間もなく「日本が日本でなくなる」ような気がしてならない。それでなくても今の日本はアジアの中だけでなく、世界の中でも高い評価を得ていないように思われるのは私の思い過ごしであるのだろうか。

(上毛新聞 2003年10月2日掲載)