視点 オピニオン21
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県環境アドバイザー 中村 文彦さん(吉井町本郷)

【略歴】日本大中退。ホテル専門学校を卒業後、東京都内の都市ホテルに勤務。1994年、吉井町にIターンして無農薬、無化学肥料による有機農業を実践中。環境問題などに関する講演も行っている。

協働の地域づくり



◎未来に希望をはせよう

 オピニオン21への投稿も一年がたち、さまざまな励ましや意見を頂いた中で、大きく成長させていただけたことは、感謝感謝の思いでいっぱいです。

 環境アドバイザーとして投稿させていただいているのですから、身近な環境問題やその対処法についても多くのことを伝えたいと思うのですが、目前で起きているさまざまな環境問題や社会問題を解決する方法を探っていくと、どうしても根本原因を解決しなければならないことに行き着いてしまいます。目の前に立ちふさがるかのような環境問題やさまざまな社会問題は、私たちの傲慢(ごうまん)な生活の結果生まれたものであって、すべての問題は、その根本原因を解決しなければ、何も変りはしないのではないでしょうか。

 学校などで起きている問題も、生徒を押さえつけても解決しないはずで、「何が彼らをそうさせたか」を解決しなければ、根本的な解決にはなりません。目先の現象だけに振り回されていると、いつまでたっても堂々巡りが続くのではないでしょうか。

 問題解決のために何をすべきなのかは、きっと皆それぞれ考えれば分かるはずですし、私たち一人ひとりの人生の主役は自分自身であり、命の本質は次の世代につなげていくことなのですから、そのために必要なことを一人ひとりが主体となって行動すればよいだけです。

 自分の人生は一度きりです。輪廻(りんね)転生を持ち出すまでもなく、このコラムを読んでいるあなたのこの瞬間も二度とないはずです。私も折角(せっかく)このコラムに目を留めていただいたことに、感謝しながら思い切り自分の思いを書きたいと思います。一度きりの人生ですから、自分の役割を生かし、自分がやりたいことに全力投球で、多くの人が喜ぶ仕事をしたいのです。

 私はいままでさまざまな角度から地域づくりの提案をしてきました。未来に向けて、思いをめぐらし、地域づくりについて考えることは、とても楽しいことです。「まちづくり」や「村おこし」とは、決して経済的な繁栄のみを追求することではありません。そこに暮らす人が元気になり、みんなが活力のある暮らしができる地域づくりができれば、それが本当のまちづくりです。経済発展のみを追及しても、お金はいくらあっても満足できません。人は営々とした歴史の中でそれぞれの役割を生かし、力を合わせて幸せな社会を築こうとしてきたからこそ、知恵が生まれ、さまざまな文化や芸術だって生まれてきたのです。

 行政と市民の協働、企業と行政の協働。「協働」という言葉を多く聞くようになりましたが、それぞれの得意分野を生かして力を合わせ、皆が豊かに暮らせるようにしていくことは、歴史の中では当たり前だったはずです。社会の流れが変化をしても、やはり一番大切なことはさまざまな立場の人がお互いを尊重し認め合い、共に力を合わせて私たちの子孫が幸せに暮らせるような、明るい地域の未来をつくることではないでしょうか。そんな地域が増え、人々が笑顔で暮らせれば、多くの問題はいつのまにか消えているかもしれません。みなさんはどう思われますか。

(上毛新聞 2003年10月19日掲載)