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佐野短期大学社会福祉学科教授 日比野 清さん(館林市堀工町)

【略歴】東京生まれ。12歳の時に失明。明治学院大学、大阪市立大学大学院修了。社会福祉法人日本ライトハウス・視覚障害リハビリテーションセンター所長などを経て、現職。

身体障害者補助犬



◎使用者の自立に援助を

 盲導犬・介助犬・聴導犬、いわゆるサービスドッグのことを法律上では「身体障害者補助犬」と言います。これらの犬は障害のある人の自立と社会参加を助けるために育成された犬であり、実働場面を見た人は、単に利口な犬が障害のある人を助けていると思われがちですが、そこにはロマンともいえる人と犬との固有の関係があります。しかし、補助犬の育成そのものをはじめ、その訓練士の養成に至っては未熟な現状であり、専門職としてもこれからという状況です。さらに、その犬たちが実際に活躍する社会の環境は、これまた誤解や偏見が渦巻いているのも現実です。にもかかわらず、このような犬を必要としている障害のある人は決して少なくありません。それは補助犬が、障害のある人の自立と社会参加を助けるに足るだけの信頼関係で結ばれたパートナーとして、精神的にも大きな役割を果たしているからにほかなりません。

 二〇〇二年四月衆議院、五月参議院において「身体障害者補助犬法案」が全会一致で可決され、同年十月一日から一部が施行されました。これにより公的施設や公共交通機関では補助犬利用者の受け入れや利用を拒んではならないとされました。さらに、今年二〇〇三年十月一日からはこの法が全面施行となり、不特定多数の人が利用する民間施設、すなわちホテル・旅館、デパート、飲食店、病院、スーパーマーケット、レジャー施設なども補助犬の受け入れを拒んではならないとされました。

 この法には、補助犬を使用している障害のある人の施設等の利用を断った時の罰則規定がないなどの問題点が指摘されてはいますが、障害のある人が補助犬を使用してさまざまな施設を利用することができるようになり、障害のある人の自立と社会参加がいっそう促進されることが期待されます。この意味ではこの法律の制定の意義は大きかったといえるでしょう。しかし、確かに法律によって補助犬を使用している障害のある人の建物や交通機関へのアクセス権(利用する権利)が保障されたとしても、この法の趣旨を各事業者だけでなく、国民一人ひとりが理解し、補助犬とその使用者の受け入れを認めていかなければ、まさに絵に描いた餅(もち)となってしまいます。補助犬に直接関係のない人たちも、この法の趣旨を理解し、その使用者の自立と社会参加を側面的に援助していこうではありませんか!

 この約二十年の間にも、一九八一年の「国際障害者年」、一九九九年の「国際高齢者年」、二〇〇一年の「国際ボランティア年」など、社会啓発を目的とした国連の各種取り組みが続き、そのかいあって社会福祉に対する国民の理解も深まってきたような気がします。

 当事者の努力と法律の制定、そして国民の理解の三つの要素があいまって障害のある人たちの自立と社会参加が遂げられていくのです。

(上毛新聞 2003年10月29日掲載)