視点 オピニオン21
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エフエム太郎番組制作スタッフ 高山 栄子さん(太田市東別所町)

【略歴】東京都生まれ。太田南中卒。民間会社勤務を経て主婦業に専念していたが、1990年から多くのボランティア活動に携わっている。

タローは5歳



◎底辺広げることに喜び

 コミュニティー放送「FMタロー」が開局五周年を迎えた。開局以来、番組にかかわっている一員として、うれしい限りである。開局半年ほど前、市長を囲み、番組作りについて意見交換する懇談会があった。私は朗読奉仕者として、会員の朗読テープを視覚障害者のほか、療養中の方にもぜひラジオを通じて楽しんでいただけないか、という願いを持って参加した。この席で市長は、コミュニティーラジオの主旨と役割について、こう述べられた。

 「阪神淡路大震災の折、市民が一番頼りにしたのは、どんなハイテクよりも手軽なコンパクトラジオによる情報だった。できることはすぐ実行する。行政は局の許可を受け、資金を集めて局を開設した。市民にラジオを配布しよう。ただし、その運営と番組制作は市民に委ねたい」

 あいにく私の思いはいろいろなハードルがあって、かなわなかったが、ボランティアスタッフとして参加を決めた。

 当初の希望番組とは畑の違う「クラシック音楽番組」を受け持つことになって、まあ、びっくり。担当は私を含めて三人だけ! えっ、うそでしょ? メンバーは幸いなことに、ほかのボランティアで旧知のS先生、M氏だった。放送開始二カ月前にはT氏が加わり、総勢四人の船出となった。そしてまさか、この“地獄”から抜け出せぬことになろうとは、誰も夢にも思わぬことだった。

 平成十年十月十日十時十分十秒、放送開始! わが番組「クラシックセレクション」の初放送は翌十一日午前九時から一時間。果たして何人の人が耳にしてくださっただろう? さて、放送開始から二カ月ほど過ぎたある日、スタジオに作曲家の服部克久氏が訪ねてこられ、収録中のわが番組の内容をご覧になった。服部氏は「ほう、すばらしい内容だね。ウン、これはどこに出しても通用するよ、驚いたな」と言ってくれた。忘れもしない、夭よう折せつといってもいい渡辺茂夫を取り上げていた時である。励みになり、力になった。以来、地元で活躍の音楽家、当月生まれの作曲家、今注目の演奏家等、いろいろなテーマのもとで五年の月日が流れ、今に至っている。

 一昨年の秋、開局三周年を記念してコンサートを開催、あふれんばかりの来場者にただただ感謝した。そして、昨年春には二回目、今年は五周年を記念し、会場も同じヨラッセで三回目の「秋を歌う・イン・ヨラッセ」を開催した。飲み物、ケーキ付きで二千円も前回と同じだった。〈若い音楽家に演奏の場を、支援する我われらは生の音楽を!〉をモットーに、楽しくクラシックの底辺を広げることができたら、これほどの喜びはない。五年間一度の休みもなく、番組を作り続けた私たちもさすが寄る年波? スタッフ募集を諮ったが、“ボランティアで無報酬”がたたってか、応募者もなく、いまだ増員ならず。スタート時の四人は息切れしつつ、この“地獄”はまだまだ続きそうである。

(上毛新聞 2003年11月18日掲載)