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群馬司法書士会企画部長 岡住 貞宏さん(安中市古屋)

【略歴】高崎高、慶応義塾大卒。1994年に司法書士登録。群馬青年司法書士協議会幹事長、群馬司法書士会理事。司法書士会では、4月に民事訴訟代理権を取得した活動のPRや、ヤミ金融問題にも尽力する。

消費者金融のCM



◎高金利を表示すべきだ

 私は司法書士として、多重債務を負った人々にこれまで数多く接してきた。その中で実感するのは、借金に対する人々の意識が軽くなりつつあることだ。とりわけ、消費者金融で借金をすることへの心理的ハードルは、以前に比べ確実に低くなっている。そして、このような「気軽さ」を生む大きな要因は、消費者金融各社のテレビコマーシャル(CM)であると思われる。

 消費者金融のCMは、単に放送本数が多いというだけではなく、内容的にも工夫が凝らされ、印象的なものが多い。ペットショップでつぶらな瞳の子犬に魅了されたオジサンが「どうする…」と思い悩むCMは、すっかり有名になったが、各社のCMに共通するのは、明るく、楽しい雰囲気である。かつて「サラ金地獄」と言われたころの暗いイメージはみじんも感じさせない。あくまで優しく、親切に「お金のことは気軽に相談してください」とほほ笑みかけてくるのである。

 しかし、そのほほ笑みは虚像というべきであろう。お金のことを相談する―この「相談する」という隠やかな言葉に隠された本質は、お金を「貸す、借りる」という関係だ。子犬は欲しいがお金のないオジサンが「どうする」と思い悩む―この「どうする」という言葉の意味を正確に表現すれば、「お金を借りるのか、借りないのか、どちらにするか」ということである。そして「借りる」という選択をした場合、ついてまわるのが上限年29・2%という高金利である。この高金利について強調するCMは皆無だ。

 消費者金融のCMは、金銭の貸借という金融業の本質をあいまいにし、もっぱら明るく、優しく、親切なイメージを視聴者に植え付けることを目的としている。そして、このイメージ戦略は恐らく成功し、消費者金融で借金するこのへの「気軽さ」を生んでいるのであろう。

 私は消費者金融のCMについて、次の二つの規制が必要であると考える。

 第一は、高金利の危険性を表示することの義務付けである。CMということの性質上、各社が良いイメージをアピールするのは仕方のないこととしても、同時に高金利に対する警告もCM中に含ませるべきである。現在でも金利の表示はなされているようであるが、ほんの一瞬の表示であり、数字を読み取ることさえ困難だ。年29・2%の金利とは、百万円を借りた場合、毎月二万四千円を何十年払い続けても、借金残高が少しも減らないということを意味する数字である。この高金利の危険性を分かりやすく、インパクトのある表現でCM中表示させるべきである。

 第二は、放送時間帯の限定である。高金利の警告をしても、子供には理解できない。子供は消費者金融のCMから、明るく、優しく、親切なイメージだけを受け取ってしまうことになる。子供がテレビを見るような時間帯には、消費者金融のCMをいっさい禁止すべきだ。かつて、消費者金融のCMは深夜だけに限定されていたはずである。少なくても、夜は十一時前には放送すべきでないと考える。

(上毛新聞 2003年11月24日掲載)