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高崎健康福祉大学助教授 江口 文陽さん(高崎市倉賀野町)

【略歴】東京農大大学院博士後期課程修了(農学博士)。日本応用キノコ学会理事、日本木材学会幹事、県きのこ振興協議会顧問。日本木材学会奨励賞、日本応用きのこ学会奨励賞など受賞多数。

機能性食品



◎購入には確かな知識を

 超高齢化社会の到来で、医療費の負担が巨大化する一方、新しい健康問題に対応してわが国では、「生活習慣」が疾病の発症や進行に深くかかわっているとし、予防を重視する観点から生活習慣病という概念を導入して、国民の生活習慣の改善を進めている。

 近年、このような背景をもとに、食品の機能性にも期待が寄せられている。健康増進法や薬事法によって、食品の薬を想像させるような表示は今年の八月末から規制されているが、今もなおバイブル本や週刊誌で話題の機能性食品の中には、「驚異! ○×で難病が完治した…」と述べられているものもある。

 なかでも飲用者の体験談などの多くは、プラシーボ(偽薬)効果(患者が良く効く薬と信じてしまうと、心理面の作用などによって小麦粉などを錠剤にして飲用させても、疾患の改善が見られるような効果)とも思われる記載も散見される。

 このような背景をもとに、医療従事者などは日常習慣食として疾病の予防や改善に対して、そういった食品を食すことには慎重論がある。しかしながら、機能性食品の中には、疾病の予防や治療に効果を示すことが医科学的に確認されているものもあり、消費者の注目度は高く、機能性食品の総販売額は近年、急激な増加傾向にある。

 販売者は、消費者および医療従事者の抱く問題点を解決するために、薬効薬理学的解析を基盤として、機能性食品の評価を行うことが不可欠である。また、消費者が機能性食品を健康維持および疾病の改善のために利用する際には、その製品における確かな基礎科学的実験検証が行われていることを確認する必要がある。

 特に機能性食品を正確に評価するためには、ヒトと同じ疾病のモデル動物で効果を示したかが重要である。なぜならば、前述したようにヒトではプラシーボ効果があるのに対して、動物ではそれがなく、効能を正しく評価できるからである。さらに、動物でのデータに加えて、ヒトの臨床検査値に示す医科学的評価についての症例を知ることである。

 なお、特定の作物で前述した評価をもとに効能が確認されたからといって、その効能が、同一名の作物すべてに対しての科学的保証につながるものではない。なぜならば、作物のような天然素材は、品種(種)、栽培法(土壌、環境など)によって、その効能が大きく異なるからである。

 したがって、消費者が機能性食品を選択する際には、医科学的評価の確立された製品であることを確認したうえで、生産地、品種、栽培法、品質管理の面から良い製品を選択できる区別化の確かな知識を持ち、安全性と機能の安定性が高い製品を購入することを心がけることであろう。

 なお、機能性食品は健康維持および医師によって処方される薬の治療効果を相乗的に高めることもあるのは事実であるが、医薬品ではないことを忘れないでいただきたい。

(上毛新聞 2003年12月2日掲載)