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油屋菓子店主 藤田 省吾さん(鬼石町鬼石)

【略歴】鬼石中卒。八塩鉱泉煎餅本舗油屋菓子店8代目。2002年8月に商店主や主婦ら町民約20人で「熊八塾」を設立し、塾長に就任。一般町民の考え方を町づくりに取り入れ、中心市街地の活性化などに取り組んでいる。

熊八塾



◎地域を何とかせねば

 わが鬼石町も過疎高齢の一途をたどっています。

 なすすべもなくと言いますか、努力の甲か い斐もなくと言いますか、地域の経済は沈滞し中心市街地の商店街に空き地や空き家が目立つ中、この地域に生まれ育ち一抹の不安と寂しさを感じつつ職人として店を営んでいます。わが町は緑に恵まれて造園業や下久保ダム・三波石峡や冬桜の桜山公園、八塩温泉郷等があります。地域経済の活性化を図るための観光的素材には恵まれていると思います。その中で私は今まで何とかなるだろうと楽観していました。

 ところがバブル崩壊後、社会状況が一転し大きな波にのみ込まれ経済的に危機感を抱き個人レベルで何ができるか分からぬまま何とか行動をと思い、熊八塾なるものを立ち上げました。現在この熊八塾の塾生は家庭のおかみさん、農家、飲食業、商あきんど人、設計業、大工、配管および燃料店、旅館業、勤め人など既成概念にとらわれぬ個性豊かな興味深い面々で構成されていて、実に楽しいのであります。また随時、塾生募集中であります。

 熊八塾とは私の大好きな落語の町民で熊さん、八っつあんの熊八のたぐいであります。私も熊か八です。持論ですが、熊八のたぐいがいるから世の中成り立っているので、実は熊八のたぐいが世の人々の大半であり、この人たちにより地域が栄え、県が栄え、国が栄えるのだと思いをはせて、この熊八のたぐいの輪を広げて何とかせねばと焦りと似たものを感じています。

 特に中心市街地の経済活性化は最重要課題であり、鬼石町商工会の主導で個店の魅力づくり委員会が商店中心で取り組んでいます。私もそのメンバーの一人であり、末席で参加しています。先人から引き継いだこの地域の活性化が思うように進まぬと、地域経済だけでなく地域社会にいろいろな影響を及ぼし、日本人として最も誇れるお互いに助け合う互助の社会が崩れていくような思いをしているのは、私だけでしょうか。

 特に高齢過疎の地域では、皆が切せっ磋さたくま琢磨し今こそ地域を見直し地域の住民が協力し合い何とか自立できる社会をつくる努力をする必要があるのではないかと思います。それには地域経済が大きくかかわってくるのだと思います。地域だけでなく国全体が少子高齢社会に進んでゆく今の時こそ、地域の課題として再度官民一体での地域社会と地域経済の基盤づくりをする必要があると思います。もっとも官民一体といっても、官にある人々も実は家庭に戻れば民なのであります。そう思いませんか。ただこの努力には終わりはないわけで、次の世代にこの地域をどう引き継いでいただくための線路をどう引くかであります。その線路に次の世代の人たちが何を走らせるかはその時代が選択をさせるのだと思います。あの時あの時代に何もしなかったから、今が駄目なんだと言われないように、今の時代の人たちが責任を持って次世代の人たちに選択肢に幅を持たせなければならないと思います。

 この熊八塾も無力ながら、いろいろな年齢層また職種の人たちと協力し合い地域社会の中で、できることから行動を起こしていきたいと思っています。また何も結果が得られなくとも後悔しないように努力を怠らないようにしたいと思います。

(上毛新聞 2003年12月14日掲載)