視点 オピニオン21
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主婦 大谷 幸枝さん(新里村鶴ケ谷)

【略歴】群馬大学芸学部卒。県内の小中学校で38年間、教職に就く。退職後、食品の安全性への問題や環境ホルモンの影響などについて、生活協同組合(コープぐんま)を中心に広報活動を行っている。

星からもらった命



◎人間は特別な生き物?

 この七年間、晴天の日の夕方になると、私は、西の空を彩る夕焼けに見とれ、雲の形や色合いの変わる様子を楽しんできました。やがて紫と紺青色の空に月や星が光り始めると、私は、いろいろな思いを込めてしばらく星たちを眺め、それから雨戸を閉めるのです。

 子どものころから夕焼けが好きだった私にとって、一日の終わりに近いこのひとときはゆったりした時間の流れるほっとする時間でした。

 星を見ながら私は、さまざまな思いにふけります。幼いころの思い出がよみがえってきます。若いころ詩にうたわれた“星は永遠に輝き”にロマンを感じましたが、現在ではその星が生まれやがて最期を迎えると多くの星は巨大化し大爆発を起こして飛び散ることが実証されています。そして飛び散った物質が広がり、また集まり長い時間をかけて新しい星に生まれ変わることを知った時には、大自然の摂理にただただ驚くばかりでした。

 昨年見たテレビでの星に関する新情報は、さらに衝撃的でした。地球上の生命に必要な物質のもとになる重い元素は、はるかかなたの巨星が大爆発した瞬間に発生した超高エネルギーによって作られたというのです。リンや鉄等の生物に欠かすことのできない物質は、太陽が巨大化し爆発してもエネルギーが不足してできないのだそうです。できるのは酸素までの軽い元素だけだそうです。長い長い年月を経て遠くから運ばれてきた隕いん石せきが地球に大量に衝突し、その後水の惑星になった地球に命を芽生えさせたのです。

 目がテレビにくぎ付けになり胸の中が熱くなりました。私たち地球上の生き物は直接見ることのできない星のたくさんのかけらから、命をもらったのです。美しいけれど遠い存在であった星から命の素もとをもらったと思うと、とても星を身近に感じ感謝の気持ちがわいてきました。そして宇宙の限りない神秘性とロマンをしみじみ感じました。

 広大な宇宙の中の目に見えないものの大きな力のおかげで地球上の生物は生まれ、さまざまな大変動に耐えて生き残った多くの生物が、命をもらい合って今の自然がつくられたのです。

 以前読んだ本の中の言葉がよみがえってきました。「一つとして無駄な生物はいない」「目に見える物は目に見えない物につながっている」。しみじみ実感しました。

 私たち人間は自然の一部でありすべての生物にかかわって生きています。微生物や虫などの小さな生物、動植物のおかげで生きてこられたのです。今人間は、特別な生物だと錯覚して生態系を無視したごうまんな生き方をしているのではないでしょうか。自然の微妙なバランスを崩し続けていけば生き延びられないと誰もが気付くはずですが。

 今夜も星を見上げています。「人間も他の生物も『自分』は大切なのです。たった一回だけのかけがえのない命なのです。自分も他の人も本当に大切にしてください」。星からメッセージがとどいた気がしました。

(上毛新聞 2003年12月27日掲載)