視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
桐生市生涯学習市民の会推進委員副座長 彦部 和子さん(桐生市広沢町)

【略歴】樹徳高卒。桐生境野保育園に約10年勤務。結婚、出産後はPTA活動に尽力。現在、桐生市生涯学習市民の会推進委員副座長、広沢婦人会副会長など。自営業。

ゲストティーチャー



◎子供たちと交流深める

 一昨年、地元の中学校から婦人会に「授業で、すいとん作りを指導してほしい」との依頼がありました。

 学校で、その授業の目的を聞くと「地域の人と交流を図りながら、すいとん作りを学ぶ」ということでした。対象は三年生で、三クラスの家庭科の授業時間に合わせて開催したいので、ゲストティーチャーとして五人ほど、お願いしたいとのこと。生徒たちは「すいとん」について勉強していたが、食材はクラスによってまちまち、味付けも味噌味もあれば、しょうゆ味もありと、いろいろでした。

 いよいよ当日、私たちはおそろいのエプロンを身に着けると、名前の上にゲストティーチャーと書かれた名札が手渡されました。ちょっぴり緊張気味の中、調理室に案内されると、生徒たちは席に着いていて「こんにちは」とあいさつをして、私たちを迎えてくれました。チャイムが鳴り、自己紹介の後、担当する班を決め、そうそうに調理に取り掛かりました。あくまでも生徒が中心ですが、工夫と手際のよさを教えながらの指導には、生徒たちも感心していました。

 さあ出来上がり。先生方にも食べていただいたり、他の班のすいとんを食べ比べたりしましたが、自分の班のすいとんが一番“売れ行き”がよく大満足でした。

 食べ終わってから、自分たちの中学時代のことを思い出し、話をしました。戦争を体験している人もいて、なぜすいとんを食べたかに始まり、今日ほど贅ぜい沢たくなすいとんではなかったこと、学校では落ち着いて勉強などできなかったこと、貧しくても、みんなで支え合って生活していたことなどを話すと、生徒たちは真剣に聞き入っていました。

 後日、生徒の多くは自宅ですいとんを作って、家族に振る舞ったことを聞きました。

 もちろん、昨年もゲストティーチャーとして、三年生に「すいとん作り」を指導したり、家庭科の公開授業が開催された時もアドバイザーとして助言をしたり、来客者にすいとんを振る舞ったりして大変喜ばれました。

 また、婦人会で取り組んでいるごみ減量のひとつ、アルミ缶の回収も二十人以上の生徒が、地域の一員として参加協力してくれています。

 さらに、小学校では三年生の国語の授業で、アドバイザーとして昔の生活についてインタビューに答えたり、授業参観を見学。幼稚園の運動会では、地元の八木節チームのおはやしに合わせ、園児たちと一緒に踊ったり、ゲームを楽しんだりしました。作品展や合唱コンクールなどの案内状も届きます。これまで、私たちが準備した行事に子供たちが参加していましたが、私たちが学校を訪問する機会が増え、地域の子供たちとの交流はより深まりました。

 ゲストティーチャーとして参加して教える喜びとともに、地域の子供たちと心のキャッチボールができて、これが生涯学習の原点かなと思ったりしています。

(上毛新聞 2004年1月6日掲載)