視点 オピニオン21
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おおたNPOセンター運営委員会副委員長
土橋 達也さん
(太田市岩瀬川町)

【略歴】大宮市(現在のさいたま市)生まれ。東京商科学院卒。会計事務所勤務の傍ら、太田青年会議所で魅力あるまちづくり実践特別委員長理事などを歴任。現在、太田まちづくりキャラバン隊顧問。

合併ねぷた



◎1市3町の若者で運行

 「やぁー、や、どぉー」。久しぶりに、腹の底から思いっきり大きな声を出した。昨年八月の「尾島ねぷたまつり」に一市三町(太田市・尾島町・新田町・薮塚本町)の方々と「合併ねぷた」と称して参加した。あいにくの雨の中、仲間とともにびしょぬれになったねぷた山車を汗をかきながら運行、祭りを盛り上げた。

 市町村合併が現実になりつつある中で、地域の住民同士で合併を意識した何か(協動)ができないかと検討していたとき、尾島町の「ねぷたまつり」に参加できないだろうかと思った。ねぷたまつりは昨年で十七回となり、地域のなじみの祭事となっている。多くの方々と合併を前に協働していくには、気軽さと楽しさで打って付けだと感じたからである。

 祭りに参加することで、誰もが地域の主人公であり、文化は自分たちで創(つく)り続けるということの大切さと責任を感じていただくためにも、いい機会であると考えた。行政区を超えて、地域の方々と参加できたら、こんな素晴らしいことはないと思い、実行に移した。

 合併ねぷたは「ねぷたで共に歩もう!」をテーマに、一市三町の若者(太田青年会議所、尾島町・新田町・薮塚本町の各商工会青年部メンバー)を中心に組織。それぞれの地域の方々にも広く募集し、「一市三町合併ねぷた」として参加することになった。

 「尾島ねぷた」は青森県弘前市の「弘前ねぷた」と同様、扇型の山車に和紙に蝋(ろう)の下絵と顔料で描かれた勇壮な武者絵と、送り絵の美人画が特徴。毎年、祭りの際に張り替えており、そこが絵師の腕の見せどころでもある。尾島の山車も毎年、化粧直しをして、勇壮で美しい山車になる。

 今回、われわれの合併ねぷたの山車は、弘前市から譲り受けた、いわば本場物。素人集団が運行するには、少しもったいないと思った。弘前から尾島まで約六百キロの旅をしてやって来た山車は、だいぶ老朽化しており、よみがえらすには難航した。搬送のために解体した部材は復元不可能なものが数カ所あり、参加した本職の大工さんでさえてこずるほどで、予定の何倍も時間を費やしてしまった。

 仮組みをし、山車に電灯がともされた瞬間には、感動で思わず涙がこぼれた。ハードルが高ければ高いほど、成し得た時の喜びはひとしおである。

 祭りは二日間とも天候には恵まれなかったが、この「一市三町合併ねぶた」が出陣するまでには、数回の合同会議を開催。本場の弘前に学び、尾島ねぷた太鼓会の方々から囃はやし子の指導を受け、行政、諸団体の方々に支えられ、祭り当日を迎えられたのだ。

 地元以外からの参加に対し、これほどまでに快く受け入れてくださった尾島町の方々の懐の深さと、支援してくださったすべての方に感謝するとともに、人と人との交流も地域の枠を超えて育(はぐく)むことができたと思う。今年以降もより多くの参加者を募り、継続的に“出陣”できることを願いたい。

(上毛新聞 2004年1月17日掲載)