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高橋農園社長 高橋 喜久男さん(宮城村市之関)

【略歴】1983年、会社を辞め農業を開始。チンゲンサイの周年栽培を確立し、96年に有限会社化した。2000年に出荷調整施設を新築し、効率的な作業を実現。1社で宮城村をチンゲンサイの産地にした。

プロ農業



◎安全安心安定供給を

 確かに、農業は大自然の中で自然を相手に、自然に逆らわずに季節に応じた農産物を作るのが望ましい。自給自足であれば、それも良いであろう。しかし、われわれ農業人は間違いなく、これで飯を食っていかなければならない。子育てから始まって、高校・大学の教育費、マイホームのローンを払い、時には旅行もしたい。そのためには、プロ農業でなければならず、作る喜びから、目標、計画の立てられる農業でなければならないのである。そこで、農業生産物においても、消費者ニーズは当然のこと、流通業者に添うようにしていかなければならないのである。近年、市場法が変わり、従来の競売方式でなく、相対で取引が成り立ってしまう。

 やはり、買う側がお客。すなわち、われわれ農家は売る側になる。われわれの農産物は市場経由で売られる。しかしながら、市場は競売のプロであるが故に、相対販売になると、弱いところがある。また、人対人、私自身も買う側になれば、強気で対応ができるであろう。しかし、われわれ農家は売る側、弱気ではプロ農家として生き残ることはできない。決して、威張るわけではないが、少なくとも対等の立場で販売したい。

 そこで、考慮すべきなのは、需要と供給のバランスを図り、安定供給を行っていくのが望ましいということ。また、それに応えてもらいたい。すなわち、ギブアンドテイクである。そして、それを願いたい。

 さらに、農業経営において、われわれ農家は、企業と違い、勘違いをしている人が多い。それは、道楽(趣味)に入り込んでしまう。ちなみに、トラクターや田植え機、コンバイン、その他の農機具など、対応年数の中での減価償却ができていない。古くなったから、また、隣の家が買ったから、買い替える(今年は、銭は残らないが、田植え機が買えたと納得してしまう)。経営内容に応じての選択ができていないのだ。今の世の中、機械は不可欠。しかしながら、小規模では、機械も扱いきれない。よって、それなりの規模にしないと農業経営は成り立たない。それには、一農家でなくとも良いが、何軒か集まったグループで、それなりの規模にして、ロスのない作業性、経営が必要である。すなわち、経営規模の拡大と、効率の良いシステムの必要性が考えられる。

 また、われわれ農家が、安全で安心な農作物を供給するためには、消費者の方たちも生産者への理解が必要ではないかと思う。これは消費者だけでなく、量販店においても言えることであるが、野菜が少し虫に食われている、虫がいた、大き過ぎる、土がついて汚れている、などなど注文が多過ぎるのではないか。農業生産においても、農薬はなるべく使用したくない。対策として、メッシュをかけたり、蜂はち、またはビニールマルチを使用して、なるべく農薬に頼らない栽培を行っていることは事実である。故に、安全安心安定供給につながり農業経営に結びつくと思う。

 また、われわれ農業人もサラリーマン並みの生活、週休二日制とは言わないが、せめて、一般カレンダーの休日回数の休みがあっても良いのでは。また、人並みの生活ができての、プロ農業ではないだろうか。

(上毛新聞 2004年2月6日掲載)