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生活評論家・薬剤師 境野 米子さん(福島県在住)

【略歴】前橋市生まれ。千葉大薬学部卒。都立衛生研究所に勤務後、福島県に移住し、暮らしの安全について模索。著書に『安心できる化粧品選び』(岩波書店)『玄米食完全マニュアル』(創森社)など。

生水を飲む



◎健康のバロメーターに

 生水を「おいしい」と思って毎日飲んでいますか? 私も大きいことは言えません。生水を飲むことの大切さを実感したのは、膠原(こうげん)病になってからなのです。そのときに食事療法として、一週間の断食を体験しました。おいしいものが大好きで、飲むこと、食べることが何よりの楽しみだった私にとって、考えられない厳しさでした。そこで呼吸の大切さと、水の重要性を教えられました。

 とりわけ、断食のときには水を飲まないと命取りになります。食事にはたっぷりと水分が含まれているので、食べなければ水分を取らなければなりません。ノルマは一日にお茶と水で二リットル以上。生水の大切さも知らず、生水を真剣に飲む体験もなかったので、「そんなに飲めるだろうか?」「水だけでは、お腹がすいて死んじゃう」と思いましたが、普段と同じ生活どころか、毎日一―二時間の散歩をするなど、結構大丈夫なので驚きました。

 それどころか、お腹がペッタンコになり、体が軽くなりました。水さえ飲んでいれば、二十―三十日は生きられることを実感しました。また、断食後に食べた粥(かゆ)のおいしさは、どんなごちそうにも勝るものでした。そうして、不自由だった両手がウソのように元通りになりました。以後、毎年血液検査を受けていますが正常値になり、元気いっぱいに暮らしています。毎日水を飲むことは食事より大切と、肝に銘じています。

 ただ、断食は医師の立ち会いのもとで実行しないと危険です。それにダイエットにはなりません。一週間で四キロ減りましたが、食べ始めたら六キロ増えました。断食は、とても太りやすい体質になってしまうのです。

 健康にとって一番よい水分は生水です。大昔から、そうして命をつないできたのですから、もっともですね。ついでカフェインが含まれてない柿茶、野草茶など。カフェインは劇薬ですから健康な人にはよくても、やはり病人や子どもには向かない飲み物なのでしょう。高校の地学の先生から「前橋の水は日本一。おいしい利根川の伏流水を飲めることは最高に幸せなんですよ」と教えられたことを、思い出します。

 空気や水のように当たり前にあるものについては、永遠にあるものと錯覚して、どうしても粗末に扱ってしまいます。お茶は飲んでも生水を飲まない人、飲めない人が増えています。それはとても残念なことです。というわけで、どこでも水が飲める日本という国の素晴らしさと、その水が汚れ、おいしくなくなっている今日の現状は、何とかしなければと思えてなりません。

 生水を飲んでいますか? 生水を飲めない人は、以前の私のように体が弱っている証拠です。毎日、生水を飲み、おいしく飲めることを、健康のバロメーターにしたいものです。そんなふうに水の大切さを実感する人が増えれば、もっと水の浄化にも多くの人の関心が向くのでは、と思えてなりません。

(上毛新聞 2004年3月13日掲載)