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中小企業診断士・行政書士 金子 眞行さん(館林市大島町)

【略歴】東京都生まれ。都立江戸川高卒。会社勤務後、商工会議所内にて企業支援業務。前橋にてコンサルティング会社設立に参画。行政書士、中小企業診断士、都立技術専門校講師。中小企業家同友会、LP21所属。

公的職業訓練制度



◎好きなことに取り組む

 四月になると、また三十余名の“新入生”と出会う。非常勤講師として簿記や資金会計を担当する職業訓練校(正式には技術専門校)での話だ。私自身が修了生であり、現在のような職業に就くことになる最初のきっかけが、失業を端緒とした通学だった。当時は「失業給付をいただきながら勉強ができる制度があるなんて!」と感激の極みであった。

 昨今、あらゆる業界で労務費の変動費化を目的として、正社員比率が下げられている。倒産による失職も人ごとではない。未経験の業務を命ぜられる程度のことは、「職あればこその幸せ」と考えなければならないだろう。一方で、組織の時代から個人の時代へという流れを受け、「会社のために働く」といった意識は、過去のものと言わざるを得ない。自らのライフスタイルや価値観を重視する傾向が強くなっているのだ。これを理解できない経営者は、判断を誤りかねない。

 働く側には、自己主張の前提となる力を身に付けることが要求される。従来、職業能力は単一の企業や組織に安定的に雇用が継続されることで向上していった。企業は社会経験のない新卒労働力を雇用し、給与という形で先行投資しながら従業員のキャリア形成を図った。しかし、余力のある企業以外では、これは過去の話。勤労者が自らの判断でスキルアップを図ることが必要になっている。

 そこで活用できるのが、冒頭のような公的職業訓練制度。県立の産業技術専門校も三校あり、非常に安価に利用できる。高卒者を対象とした生産技術系の長期コースが多いが、無料の在職者向け講座があるのはありがたい。

 事務管理系では、ビジネスキャリア制度という認定制度があり、伊勢崎市にある県職業能力開発協会が窓口となっている。雇用・能力開発機構群馬では高崎市にポリテクセンター群馬を設け、在職者・離職者を対象として事務系から技術系まで、幅広いコースが開講されている。

 また、民間機関の各種講座でも費用の一部がハローワークから支給される制度がある。指定講座は、中央職業能力開発協会のホームページから検索可能で、県内でも複数の学校が探し出せる。

 東京都立の専門校では、九州や東北地域から居を移して入校した受講生の例もあり、広域対応している。私の属するライフプラン21というグループでも、ファイナンシャル・プランナーや行政書士、社会保険労務士などの実務家による講座や、県内外各地での地区交流会を常時開催している。

 いずれにしろ、自分の時間と資金をつぎ込むのだから、興味や関心の持てること、好きなことに取り組むことが重要だ。

 最後に昨年、印象的だった、ある経営者の方の一言で結ぶことにする。「最近、吹っ切れたよ。好きなことやらなきゃ、ダメなんだ。そうじゃないと、山を越せない」。そして「楽なことじゃないよ」と念を押した。

(上毛新聞 2004年3月17日掲載)