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油屋菓子店主 藤田 省吾さん(鬼石町鬼石)

【略歴】鬼石中卒。八塩鉱泉煎餅本舗油屋菓子店8代目。2002年8月に商店主や主婦ら町民約20人で「熊八塾」を設立し、塾長に就任。一般町民の考え方を町づくりに取り入れ、中心市街地の活性化などに取り組んでいる。

多目的広場の運用開始



◎後世に何かを伝えたい

 「人は一生、名は末代」と言う言葉を、どこかで聞いたような記憶があります。そして、この言葉の意味を最近になって、よく考えるようになりました。それはNHKテレビの『プロジェクトX』という番組を見てからのような気がします。自分に与えられた場所で懸命に努力し、勇気を発揮している人々を見て感動し、何事にもひたむきな人々の姿を見て教訓にしています。

 私は山間地の小さな町で生まれ育って現在まで、この町から離れたことがありません。職人として仕事に追われている毎日で、この地域の一人として家業以外に自分にどんなことができるのだろうか、また何をどう行動すべきか、社会のどの位置に自分はいるのだろうかと、少々思い悩んで悶々(もんもん)としている日々でした。

 そんな時、わが町で中心市街地活性化計画法による活性化計画が持ち上がりました。最初は何のことか、よく分かりませんでしたが、理解をするのにそう時間はかかりませんでした。期を同じくして、いろいろな経緯で職業や年齢、性別など一切関係ない私塾「熊八塾」を立ち上げ、一年半が過ぎました。この塾では、地域をどう考え、地域でどう行動していくかを、座談会形式で進めています。

 一人ひとりの意見を大事に、何をするか、何ができるか。メンバーは個性豊かで、思いもよらぬ発想も生まれ、高齢過疎の田舎の町に一筋の光を、と座談会を重ねてきました。その一筋の光が、先月二十九日に運用開始になりました中心市街地の多目的広場「おまつり広場」であり、広場での「まちなか市」の開催であり、鬼石型移動店舗の運用であります。

 町民なら誰もが、この広場での移動店舗に参加できます。商売の試験営業を行うもよし、新たなコミュニケーションを生み出す場として活用してもよしと、この移動型店舗の建築、運用そのものが、われわれの“プロジェクトX”なのです。

 海の物とも山の物とも分からない熊八塾の計画に対し、役場の方々はもとより、県都市計画課の方々の温情、また鬼石町職工組合の人たちの協力がありました。熊八塾の行ったことは、社会的にはささいなことでありますが、そうした温情や協力があってこそ、今盛んに言われているコラボレーションができます。これは熊八塾の塾生たちにとって、大きな一歩となりました。まさに、われわれの序章で、これからが第一章といえます。

 これから、この広場や鬼石型移動店舗を利用して鬼石町の人々をはじめ、県内はもとより県外の方々とどうコラボレーションしていくか。同じ悩みを抱える人々と活動をともにし、後世に何を伝え、後世のために何ができるかを考えていこうと思います。

 今後も、自分を叱咤(しった)激励し、有言実行でチャレンジする決意でいます。「人は一生、名は末代」という言葉を自分への戒めとし、塾生や地域の人々とともに、自分の足元から行動していきたいと思っています。

(上毛新聞 2004年4月4日掲載)