視点 オピニオン21
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高崎商科大学教授 硲 宗夫さん(神奈川県横浜市)

【略歴】大阪大大学院修了。毎日新聞記者に。経済畑を歩き、編集委員室長。定年後に経済経営評論家。和歌山大経済学部教授を経て2001年から現職。著書に『悲しい目をした男 松下幸之助』など多数。

上信電鉄沿線開発



◎「住民発」の地域創造を

 世の中が動きだした。経済は着実に上昇線を描き、地域再生は加速度を増している。激動の世の中だから“なんでもあり”の感じが残るにせよ、一陽来復を喜び、行動を開始しよう。

 時代の潮流は『地域の再構築』に向かっている。地域創造に住民が連帯して取り組んでいけば「生きがいある日本」ができていく。

 地域再生の促進に私ども高崎商科大学がお役に立っていくため、このほどネットビジネス研究所に「地域学」「観光学」「流通情報学」の三つの研究会を設置し、地域連携の研究活動に取り組んでいる。創業支援に、あちこちの知恵を結集する作業も課題だ。

 また『地域力の研究』をテーマとする叢書(そうしょ)(論文・報告集)を産官学連携で編成する作業を始めている。多様な要素からなる地域力を分析・研究して、住民の“幸せ”(快適さ、豊かさ、プライドなど)の開発を進める手掛かりを得たい。

 さらに『上信沿線地域活性化シンポジウム』の開催がある。上信電鉄沿線地域の振興をめざす広域勉強会で、産官学連携の共催形式が望ましい。沿線の魅力を紹介し、未来開発の可能性を検討し、挑戦意欲を盛り上げる機会にしたい。時期など関係筋と協議中だ。

 シンポジウムの具体的な目的の一つに地域の“足”として懸命に頑張っている上信電鉄を、地域ぐるみで支援していく課題がある。軸足をそこに置くと、上信電鉄の貸し切り電車をシンポジウムの会場にしたくなる。往路は勉強会、復路で親ぼくと交流のビール・パーティーはどうだろうか。技術的にいくつか隘路(あいろ)はありそうだが、克服する蛮勇があってもいいと思う。

 地域活性化の作戦に、社会人向け「公開講座」を電車内で開く構想はどうか。自治体、幼稚園、農協、商店、銀行も語る地域相互学習の『走る大学』を産官学連携で開講する。教室は貸し切り列車か、閑散時の列車の後部辺りを充てるか。乗車賃が受講料となるが、他にも経費が要る。出前講義だけに頼るわけにもいくまい。スポンサーがほしい。協賛企業を求めたい。

 上信沿線は開発可能性に富み、住宅地、農業・工業用地など高度利用に適している。歴史や文化も魅力的だ。官営富岡製糸場跡はユネスコ「世界遺産」への登録推進に向けた研究が進んでいる。楽しみだ。下仁田のネギとコンニャクは有名。脚光を浴びる南牧村の木炭・竹炭。伊香保、草津をはじめ『世界一』の群馬温泉集団に隣り合わせた地の利がある。水辺に注目すれば「鏑川でカヌー競技を」と声が上がる。健康と福祉、生きがい志向の群馬である。多様なイベントができる。各地の“自慢大会”を開催しても面白い。祭りの全員集合もやってみたい。

 シンポジウムに向けた地域活性化アイデアの提案を当大学ネットビジネス研究所に寄せてほしい。討議資料にまとめ、発表したい。

 「上信沿線」を例に取り上げたのは、地域再生ソフト開発の成果を広域連携に結び付けていくステップにしたいから。各方面のご支援をお願いいたします。

(上毛新聞 2004年4月14日掲載)