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おおたNPOセンター運営委員会副委員長 土橋 達也さん(太田市岩瀬川町)

【略歴】大宮市(現在のさいたま市)生まれ。東京商科学院卒。会計事務所勤務の傍ら、太田青年会議所で魅力あるまちづくり実践特別委員長理事などを歴任。現在、太田まちづくりキャラバン隊顧問。

地域の向上



◎常に“小さな一歩”から

 「人生は終生勉強 日々精進」。勉強にこれで終わりということはない。世の中は日々進歩発展し、次々と新たなものが生まれている。学ぶ心を常に持ち続けたい(松下幸之助著『道』より)。学ぶということで、男とか女とか、大人とか子供とか、早すぎるとか遅すぎるといったことは決してない。人はさまざまな環境の中で生活をしている。

 近ごろ、身近な生活用具として携帯電話やパソコン、液晶テレビなどの家電製品が目まぐるしく進化し続けている。進化しているものは、世の中を見渡せばきりもなくある。ほぼ、すべてのものが進む度合いに差はあるものの、何らかの進化はしてきている。その進化を重宝に思い、より快適に過ごそうとしている人々は大勢いるし、当然、私もその一員である。ただ、自分の家庭や仕事のエリア内だけが快適に過ごせればいいと言うのでは、少し寂しいのではないか。

 私の三人の子供たちは、どちらかというと受動態である。長女は昨年の夏、「ぐんま少年の船」に応募した。これは県主催による四泊五日の船での団体生活を体験させてくれる取り組みである。参加資格は小学校五年生から高校三年生までの子供たちで、行き先は北海道。県内の各市町村から集まった子供たちはほとんどが初対面だった。親元を離れての生活には当初、不安でいっぱいだったようだが、旅を終えて帰って来たときの顔は輝いていた。

 同じ時期に長男と二男は榛名山に三泊四日のキャンプに参加した。日ごろ、友達との遊びはもっぱらゲームで、室外で遊ぶことはあまりなかった。このキャンプでの身支度はすべて自分たちで行ったようで、当時一年生と三年生の二人は、最近ではなかなか見られないほどの汚しっぷり。顔も真っ黒であったが、これまた満面の笑みを浮かべて帰ってきた。

 子供たちは、それぞれの旅で経験したことを私たちに夢中になって話してくれた。イルカの群れを見たこと、キャンプでの食事作りや、初めてノコギリを使って木工細工をこしらえたこと等々。このわずかな間での経験から、受動態であった子供たちが物事に対して前向きに取り組むきっかけになれたと思う。

 小さいころからの家族以外の人とのコミュニケーションの取り方や、団体生活でのリーダーシップの図り方など、さまざまな環境の中で自分自身が考えて行動した経験は、後として大きな自信となり、いつの日か役立つときがくると思う。

 私自身は、現状になかなか満足しない性質である。少しでも使い勝手が良くなったり、速くなったり、常に一歩前に進むことを心がけている。それは、ほんの小さな一歩でもかまわない。去年よりも、前回よりも、昨日よりもたとえ少しでも。そして、多少おせっかいと感じようが、自分や家族だけのことではなく、仲間のことや地域のことまでも。自分たちのまちは自分たちの手で、さまざまな人たちとコミュニケーションを図りながら、家族ぐるみで地域向上にも携わっていきたいと思っている。

(上毛新聞 2004年6月21日掲載)