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勢多農林高校教諭 新井 秀さん(前橋市箱田町)

【略歴】高崎女子高、東京教育大体育学部卒。陸上競技の現役時代は走り幅跳び国体3位、400メートルリレーインカレ入賞。1968年、松井田高教諭となり、伊勢崎女子高、高崎女子高を経て現職。

県高校総体



◎総合開会式の見直しを

 今年も県高校総体が行われ、それぞれのドラマが展開されました。総合開会式での行進で、勢多農は六年連続の優秀校に選ばれ、大きな喜びであると同時に、正直安どしました。参加した生徒たちは、他の仲間とともに入学以来、体育の授業を通して、集団行動の一環として行進の練習をしてきました。そして、さらに特別時間割を組んで二時間ずつ、三日間行ってきました。

 なぜ、そこまでやるのか疑問を持つ人もいると思いますが、「やればできることもある」「やらなければ何もできない」という方針で取り組んでいます。一人では困難だと思われることでも、集団で行えば、その過程において変化が生じることがあるからです。そして、六年連続という事実から生徒たちは、きっと「やればできたじゃないか」ということを学んでくれたと思います。

 しかし、全く別の観点から見ると、多くの学校がそうであるように、総合開会式の行進に参加する生徒は、そのほとんどが高体連に属する競技には無縁のいわゆる「帰宅部」といわれている生徒です。何らかの形で高校総体に参加するということで行進し、採点されている現実を知った時、何と思うのでしょうか。

 高校総合体育大会という名称になったのは、三十九年前の新潟大会からだと記憶してます。それまでは、各競技別にインターハイと呼ばれ、各地で別々に行われ、総合開会式なるものはもちろんありませんでした。なぜ、全競技を一カ所に集める必要があったのかは、把握していませんが、現在は、各地区大会(県単位)まで行っています。しかも内容を変えて。各校とも規模は違いますが、バスやマイクロバスを仕立て、一部の生徒(ほとんど一年生の帰宅部)を集め、総合開会式に参加しています。

 前橋地区の学校では、二・三年生の帰宅部の生徒はスタンドで見学し、陸上競技部員や野球部員はそれぞれの部署で補助員という裏方で参加しています。前橋地区以外では、俗に「裏番組」といわれていますが、映画観賞や特別時間割による授業等々、それぞれ工夫? しながら消化しています。なぜ、そこまでして総合開会式を行わなければならないのか、疑問です。

 過去、いろいろな人が、いろいろな観点から批判をしてきましたが、変化の兆しは感じられません。金・時間・役員及び補助員のボランティア活動をどう位置づけているのか。もうそろそろ見直してもよいのではないかと思います。既成事実を変えるのは、ものすごいエネルギーが必要ですが、今こそ、それが必要かつ強く期待されているのではないかと思います。

 参加せざるを得ない現状では、先に述べたように、不本意ながら観点を変えて授業の中で取り組んでいかざるを得ないでしょう。しかし、そこにかかる負担は、想像を超えているといっても過言ではありません。六年連続が果たせたのだから、いいやでは済まされないと思います。

(上毛新聞 2004年7月10日掲載)