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県科学技術顧問 中川 威雄さん(神奈川県川崎市)

【略歴】東京都生まれ。東京大工学部卒。同大教授、同大先端素材開発研究センター長、理化学研究所研究基盤技術部長、群馬産業技術センター長など歴任。現在、ファインテック代表取締役、県科学技術顧問。

日本の製造業



◎技術的優位さが頼りに

 中国が世界の工場になったといわれ、身の回りの多くの電子情報機器が中国産となり、さらにハイテクの象徴である半導体や液晶といった産業が、韓国や台湾企業に追い抜かれる状況を見ると、日本の製造業の将来を危ぶむ気持ちを持つのも当然である。さらに中国の自動車生産の急増で、日本の製造業をけん引してきた自動車生産まで、数年後には中国に追いつかれてしまうという。

 言うまでもなく、製造業は日本の富の源である。中国を中心とするアジア諸国が台頭する中で、日本の製造業の生き残る道はそれほど多くはない。一つは経営と技術資源を生かし、新製品の開発と販売に特化し、製造は自らの工場進出を含めてアジア諸国に任せるというやり方である。二つ目は、日本国内でなければ製造できない高度製品製造に特化することであり、それこそオンリーワン企業での生き残り策である。いずれの選択にしても、技術的優位さが頼りであり、現在以上の高い技術力が求められる。

 いろいろな調査結果によれば、日本の技術の優位性が徐々に下がっている、とされている。しかし、少なくともアジア諸国と比較する限り、日本の技術力はまだ圧倒的に優れている。アジアの発展途上国で新しい技術開発に取り込んでみると、全くの無い無い尽くしの状態に困惑してしまう。同時に日本での恵まれた技術開発環境のありがたさを改めて認識する。

 生産設備を購入して、その使い方を教わって生産することと、生産設備を改良したり、新しい生産財を開発したり、さらには新しい製品や技術を開発することとは全く違う世界なのである。そのことは台湾や韓国のように、一見、日本並みの技術レベルを有すると考えられる企業が存在しても、そこから容易には新技術が生まれてこない事実からも納得できるというものである。

 中国では急速に研究開発投資を増やしつつある。しかし、発展途上国で十分に機能する技術開発環境を構築するのは容易ではない。開発に要する技術は多岐にわたり、いずれも最高のレベルが必要となる。当然、社内だけで賄えるわけはなく、中小企業を含めた高度技術を保持する多くの他社の協力が不可欠である。さらに、技術開発を行える人材を育てるのも易しくはない。技術開発の手法は多様であり、今のところ実地を踏んでの経験に基づく人材づくりより他に道がないからである。

 中国では身近に金もうけの種がごろごろ存在するなか、まずは技術をまねしようということで、時間がかかり失敗のリスクも高い技術開発には真剣には取り組めない雰囲気にある。日本の製造業も今やっと息を吹き返しつつある。多くの製造業での人材採用は、中途入社を含めて増えている。今や、それらの大半が技術開発要員であるのは当然のことである。日本の標ぼうする科学技術創造立国は、世界に冠たる製造業から実践されていくのではなかろうか。

(上毛新聞 2004年7月18日掲載)