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(株)ちばぎん総合研究所代表取締役社長 額賀 信さん(神奈川県川崎市)

【略歴】吾妻・東村生まれ。東京大法学部卒。日本銀行に入行後、オックスフォード大留学、経済学修士卒。神戸支店長を経て退職。著書に『「日本病」からの脱出』など。経済誌への寄稿などを通して持論を展開。

観光振興



◎地域の活力は笑顔から

 仕事柄、講演を依頼されることが多いが、地域の活力をどのようにして取り戻すかを問われることが増えてきた。聴衆も熱心な方が多く、「地域活力」が多くの地域にとって共通の切実な課題となってきたことを痛感する。

 これまでは、地域の有力政治家や自治体職員が東京へ行き、公共工事や補助金を獲得することによって地域活力を維持しようとすることが多かった。しかし、国に財政上の余力が乏しくなってくると、どの地域でも自前の活性化策を考えなければならなくなった。観光が脚光を浴びるようになったのは、自前の活性化策を企画、実施する必要が急速に高まったことが一因となっている。

 何かと関心を高めている観光だが、それをテーマに地域の活性化策を話すと、人々の期待は何をすると効果が大きいか、ということに集中しているように思う。できるだけ効果が高く、かつ直接的に効果と結びつく施策を求めるのは、人情だからやむをえない面はあるが、そうした即効性の高い施策は、まずないのが実情である。

 観光は、地域づくりからスタートする。そもそも住んでいる地域の人々自身が愛せない土地に、他の地域の人々が訪れることなどあり得ないからである。地域づくりは地域の魅力を発見し、創造する活動である。では、その地域づくりは何からスタートするかというと、住んでいる人々の笑顔からである。

 実際、私は地域づくりの原点は笑顔ではないかとつくづく思うようになった。それは、行きかう人々が笑顔をつくって、あいさつする地域は、あれこれと難しい理屈抜きに間違いなく、よい地域だからである。そしてまた私たちが見知らぬ地域へ行って、最も強く印象を受けるのも、人々の笑顔だからである。

 もしも、私たちがその同じ地をもう一度訪れることがあるとすれば、それは、知らず知らず笑顔にひかれていることが少なくないはずである。観光振興でも、地域づくりでも、その原点は笑顔なのである。

 笑顔をつくって、それですぐに儲もうかるかというと、そんなことはないだろう。けれども人は幸せな時、楽しい時、期待に胸を膨らませる時、自然とほほ笑みを浮かべるものである。そうした笑顔の生まれる地域に、人が来ないはずがない。振り返ってみれば、一九九〇年代以降の長い経済停滞の中で、私たちが忘れていた大切なもの、それが笑顔だったのではないか。

 笑顔を取り戻す運動、それが観光振興策の基本である。よい地域とはどういう地域かと問われれば、私はためらうことなく、笑顔の多い地域だと答えるだろう。そして笑顔こそが、長い目で見れば、最も確実な所得確保政策である。私たちはどうしても即効性を求める傾向が強いが、昔から言われていることを思い出してみよう。「急がば回れ」なのである。そして、「笑う門には福来る」なのである。

(上毛新聞 2004年7月26日掲載)