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勢多農林高校教諭 新井 秀さん(前橋市箱田町)

【略歴】高崎女子高、東京教育大体育学部卒。陸上競技の現役時代は走り幅跳び国体3位、400メートルリレーインカレ入賞。1968年、松井田高教諭となり、伊勢崎女子高、高崎女子高を経て現職。

学校の週休2日制



◎夏休みにしわ寄せが

 今年の異常気象の中、連日、熱中症に関する記事が新聞に掲載されています。屋内で三六度、屋外で四〇度を超す毎日です。体育の授業では、生徒にスポーツドリンクや麦茶などを持参させ、小まめに休憩をとり、水分補給を促すなど工夫していますが、授業を成立させるのは大変です。体育科独自のマニュアルをつくり、それに従って授業内容を変更するか、中止するか、授業担当者を中心に決定し、実践しています。

 実はその過程で、光化学スモッグ注意報が出ているのだから、熱中症注意報なるものを出せないものかという考えが浮上してきました。直ちに校長にその旨、報告したところ理解を示され、何らかの方法で努力していただけることになり、期待しているところです。

 それにしても、こんな状況になるとは、誰が予想したでしょうか。例えば、まれに風邪をこじらせ肺炎などを併発して死を招くことがありますが、めったに起こるわけではありません。しかし、熱中症は判断を誤り、処置が遅れると短時間で死に至ることがあり、個人はもちろん、周囲の人も十分注意が必要です。生徒には何度も注意を喚起していますが、夏休みに入って授業がなく、正直、ホッとしています。

 こうした状況の中で、上毛新聞の一面トップ記事で「夏休み補習花盛り、週5日制で学力懸念」と大きな見出しで掲載されていました。内容は県内の公立小中学校で、サマースクール、補習、講座など、形式や内容はさまざまですが、基礎の定着を狙いとしたものがほとんどだといいます。

 高校はといえば、一部の高校では、かなり前から夏休みを利用して二十日間程度、補習に当てています。最近では、土曜日まで行っています。不思議なのは、土曜日であるにもかかわらず、生徒は試合などで出席できない場合、「公欠」なのです。土曜日は、教育現場でも勤務不要の日であり、生徒にとっては休日なのです。

 「ゆとりの教育」から始まった週休二日制は、学力低下という名のもとに、無理が道理を超えた状況で、現場では、すでに破は綻たんしていると言わざるを得ません。なぜ、週休二日制を見直すことができないのか。総単位数を変えないで、休日を増やせば、そのしわ寄せがくるのは当たり前です。その補充を、高校生をはじめ小中学生まで拡大し、一部を除いて、クーラーも扇風機もない悪条件の中で行われなければならないのか。理解に苦しみます。悪条件を克服して行うことに意味があるというのでしょうか。

 また、勤務不要の日に行う補習に対して、指導者は部活動顧問と同様にボランティアとして参加しているのでしょうか。それとも報酬を得ているのでしょうか。もし得ているのだとしたら、どこから支払われているのでしょうか。分からないことばかりです。しかし、明確なのは生徒たちが、このしわ寄せの犠牲になっている事実です。この現状を潔く認め、施策を改めることを強く望みたい。

(上毛新聞 2004年8月16日掲載)