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中小企業診断士 小谷野 善三郎さん(神奈川県横浜市)

【略歴】太田高、中央大第二法学部中退。中小企業診断士、行政書士。経営コンサルタント事務所主宰。行政書士・経営コンサルタントの二十五年間に会社設立・開業支援を行った企業は百余社、経営指導は四百社に及ぶ。

バブル崩壊後の企業



◎提言受けて立ち直る

 メーカー在勤中の私は労務管理を担当しました。そこで人の意見を聞くこと、相手の立場になって考えること、人の隠れた長所を引き出すことを学びました。私の人間関係論の出発がここにありました。また、労働白書、厚生白書を読んだことが人口問題、食料問題、さらに物流問題を考える発端となり、後に経営コンサルタントの道に進む端緒となりました。

 メーカー退職後、食料品店舗関係の雑誌を通じて、アメリカ小売業の店舗設備の動向を知り、日本国内への波及を予見しました。メーカーの事業部責任者に冷凍・冷蔵ショーケースの製造を提言しましたが、製造に踏み切ることはありませんでした。現在の冷凍・冷蔵ショーケースの普及を見るとき、私の予測に間違いがなかったことを痛感します。

 私の経営コンサルタントとしてのスタートは設備会社在籍時代に始まり、外資系コンビニエンスストアの日本進出以前、生鮮三品を主体とした国内コンビニエンスストアの立地診断と店舗施設・開業時の経営指導でした。しかし、外資系コンビニエンスストアの国内進出は、在来の日本的コンビニエンスストアを圧倒し、外資系一色に塗りつぶされ、私のコンサルタントとしての夢も霧消しました。

 そこで行政書士として建設業界に活路を転換し、設備業界で培った経営のノウハウを活用した経営コンサルタントとして独立しました。建設業経営コンサルタントとして開業以来、会社設立・創業に関与した企業は百社を超え、経営指導をした企業は四百社に達しました。私の指導内容は経営計画の策定、財務管理・労務管理から見た経営改善の提言にありました。その事例を紹介しましょう。

 石油基地・ガソリンスタンド等の電気・計装工事を業とするY電工は、現社長が二十三年前に脱サラして興した会社です。設立・創業に際して行った私の助言は、計画性と管理。具体的には、受注台帳と工事台帳による個別管理の徹底でした。同社は創業以来、この提言を実行し、優良企業に成長しました。

 バブル期、神奈川県内中小建設業界でも不動産取得に走った企業が多数ありました。しかしバブル崩壊後、不動産価格の下落と業績低迷により、苦境に陥っている企業が少なくありません。Y電工は事業用不動産を社長夫妻の個人資金で調達。その上、支払手形・借入金もなく、自己資本比率は50%を超えています。現在は無人化スタンド用機材の開発、新市場への販路拡大に積極的に取り組んでおります。

 Y工業は、水道工事業者として湘南地区で有数の企業です。創業以来、大手ゼネコンと結び、ビル、マンション等の大型工事を受注して成長しました。バブル期には銀行から資金を導入して土地を取得しました。しかし、バブルの崩壊は工事量の減少と工事価格の低落を招き、業績低下と借入金の返済が経営を圧迫しました。そこで業務の重点を新築工事から改修工事に移行し、不要資産の整理を進めました。その結果、売上高は大きく落ち込みましたが、経営内容は格段の改善を見ることができました。

(上毛新聞 2004年8月27日掲載)