視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
主婦 大谷 幸枝さん(新里村鶴ケ谷)

【略歴】群馬大学芸学部卒。県内の小中学校で38年間、教職に就く。退職後、食品の安全性への問題や環境ホルモンの影響などについて、生活協同組合(コープぐんま)を中心に広報活動を行っている。

森林NGO


◎未来に向けて行動を

 八月中旬の上毛新聞にブラジルの「アマゾン群馬の森」で三千本もの植林をした記事が掲載されました。また、九月にはブラジル移民の方々がこの森を守る努力をされ、森林と共生するアグロフォレストリー農法の研究の場になることが紹介されていました。私もブラジルへの強い思いがあって、感無量でした。

 実は、地球温暖化防止の最後の砦(とりで)ともいえるアマゾン熱帯雨林の保護再生には、温暖化を加速させている先進国が支援すべきだと常々思っていたからです。しかも今年の初め、既に八年以上も前から森林再生のための技術指導や調査研究情報等の支援を行っている日本のNGO(非政府組織)があることを知って、大変感動したのです。

 このNGOは、日本の二つの大学の研究室が中心となって作られた「日本ブラジルネットワーク」(JBN)で、教官や学生たちが主体となって、現地NGO「POEMA」と連携して先住民や貧農の人々の生活自立支援もしています。POEMAは、ブラジルのパラ連邦大学内に設置された「環境と開発研究センター」のアマゾン貧困撲滅環境プログラムから始まったNGOです。広大なブラジルは気候風土も多様で、激しい貧富の差や民族問題、深刻な経済状況など山積みの問題を抱えています。

 このJBNの具体的活動を話してくれたのが、ブラジルから一時帰国した福代孝良さんという青年でした。真っ黒に日焼けした“ひげの童顔”は笑うと人なつこく、温かな人柄で、声高に困難な現状を訴えることに気負いも全くなく、淡々と自然体で映像を主に活動の様子を説明してくれました。しかし、その内容は信念だけでは到底活動できないと思えるほど、大変さを感じさせるものでした。

 当たり前のことを楽しそうにやっているような彼に行動力のすごさを感じ、私は尊敬の念を抱かずにはいられませんでした。

 POEMAとの主な支援活動を挙げてみますと、本紙にも紹介された多種類小量生産のアグロフォレストリー農法の技術援助のほかに、日本の紙すき技術を導入した野草から紙への共同生産です。幾種も見本の紙を見せてもらいましたが、応用範囲が広くて有望製品です。また、今まで農村で多量に捨てられていたココヤシの殻から丈夫な繊維を取り出し、車のシートの原料として継続的に定量供給できる会社を設立しています。

 さらに、先住民コミュニティーフォレストは、先住民自身が共同で持続可能な森林利用を進めていけるよう技術指導や訓練を行っていて、焼き畑による森林減少の防止に役立つと思いました。熱帯林の再生種子バンクは、今までのユーカリ等の外来種の植林ではなく、郷土樹種の植林が最も望ましいため、不足している優良種子の採取にかかわる知識や技術支援を行い、併せて収入源にもできるシステムです。

 福代さんと仲間の人たちの目は、地球全体の未来に注がれています、国を超えて問題解決に努力し、また自らも現地の文化等を楽しみ、友人の輪を広げていくだけでなく、自国のためにも私たちに夢を与え続けているのです。

(上毛新聞 2004年10月9日掲載)