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高崎健康福祉大学教授 江口 文陽さん(高崎市倉賀野町)

【略歴】東京農大大学院博士後期課程修了(農学博士)。日本きのこ学会理事、日本木材学会幹事、県きのこ振興協議会顧問。日本木材学会奨励賞、日本応用きのこ学会奨励賞など受賞多数。

キノコの食べ方


◎通年でうまく利用を

 秋も深まり、テレビや新聞ではキノコに関する報道が目立つようになりました。皆さん、キノコは秋の食べ物と思っていませんか。確かに、秋になって野山に立ち入ると、多くの野生キノコを目にします。私も九月に山を散策し、ハタケシメジ、ハツタケ、ヌメリイグチや、バレーボールのように白くて大きなオニフスベなどを見つけました。

 しかし、野生キノコは日本の多くの地域で春夏秋冬を通して発生しています。マツタケにも春に発生するものがあるのです。このように、キノコは季節と関係なく観察できたり、味覚を楽しめる食品(微生物)であることを知ってください。

 特に、野生キノコから有用品種を人工栽培できるようにした種類は、季節による旬などなく生産されています。さらに、栽培キノコは生産者が最もよい時期に収穫して販売するので、栄養成分も安定的に含まれています。

 キノコ類の栄養機能成分は、食物繊維、ビタミン、良質なタンパク質、糖質やミネラルなどです。百グラム当たりの食物繊維量は、野菜類の中でも多いセロリと比較すると、生シイタケでは約一・八倍以上もあるのです。さらにキノコには、他の野菜類には少ないビタミンDが豊富です。これらの成分は、体内への吸収や腸管への刺激によって健康増進に役立っています。キノコは低カロリーで、生活習慣病やがんの予防、免疫力を高めるなどの効果も確認されています。

 私の研究室において、高脂血症や高血圧症、糖尿病、関節炎などの人間の疾患と類似した病状のラットやマウスに、栽培されている各種キノコを食べさせる試験を行ったところ、生活習慣病を予防できることが分かりました。その量を人間の一日量に換算すると、生のキノコの状態で二十五―百グラム程度を毎日摂食することとなります。予防効果を高める食べ方としては、収穫後、時間がたつと有用成分が減少するものもあることから、生産地と消費地が近い国産品を鮮度のよいうちに利用することです。

 さらに調理時には、キノコの有用成分が水に溶け出てしまうので水洗いせず、汚れはぬれタオルや指で取ることです。また、加熱し過ぎないことが重要で、煮たり、いためたりするときには、最後にキノコを加えるのがよいでしょう。また、キノコ汁や鍋にキノコを入れた際には、残り汁で雑炊を作るなどして汁に溶け出した栄養機能成分まで摂食することが理想的です。

 本県は、生シイタケの生産量が全国第一位であるとともに、他のキノコ類の生産量もトップクラスを誇るキノコ王国です。県林業試験場が品種開発したハタケシメジや、高崎健康福祉大学と鳥取大学などの共同研究によって開発したバイリング(雪嶺たけ)などの機能性効果が高いニューフェースのキノコも、本県が誇れるものでしょう。健康や美容の増進を目的として、多くのキノコを通年でうまく利用していただければ、キノコの研究者としてもうれしい限りです。

(上毛新聞 2004年10月21日掲載)