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県立歴史博物館長 黒田 日出男さん(東京都練馬区)

【略歴】東京都生まれ。早稲田大卒、同大大学院修了。東京大史料編纂所教授、文学博士。第7回角川源義賞受賞。著書は『龍の棲む日本』(岩波新書)『謎解き 伴大納言絵巻』(小学館)など十数冊。

歴博のホームページ


◎広がりのある情報を

 県内には都市型総合公園がいくつもあるが、高崎市綿貫町にある総合公園「群馬の森」もその一つである。旧第二陸軍造兵廠しょう岩鼻製造所の跡地に設けられた二六・二ヘクタールの公園だ。豊かな自然があり、野鳥も多い。広々とした大芝生広場では、子供も大人もゆったりと遊べる。岩鼻製造所時代の跡も公園のそこここに見ることができる。

 そして、その中に二つの文化施設、県立近代美術館と県立歴史博物館がある。自然と文化の両方を満喫できるのが、「群馬の森」のだいご味なのである。一日ゆっくりと両方を楽しんでもらいたい。来られたことがない方には、試しに来園をお勧めしたい。

 わたしのいる県立歴史博物館のホームページでは、「群馬の森」の四季の移り変わりを写真画像で紹介している。今は「秋の写真」が十三枚。それを見れば、何が見ごろかが分かる。そのすぐ下に「群馬の森公園内」とあるのをクリックすると、「群馬の森」の様子を二〇〇二年九月から今月まで、月毎の写真画像で紹介している。歴史博物館がなぜ、こんなことをと思っている方もおられるだろう。

 その意図は次の二つである。ホームページの中に「群馬の森」の四季の情報を取り込むことによって、歴史博物館は自らが包まれている豊かな森との一体感を自己演出することができる。この試みを「群馬の森と一体化計画」と称しているゆえんである。と同時に「群馬の森」を訪れたいと思う人々にとって、四季の移り変わりを示す一番の情報提供となるだろうと考えたのである。

 「群馬の森」に訪れたいと思ったら、歴史博物館のホームページを見てから来園されることをお勧めする。同ホームページを、毎月一度はのぞいてくださることをお願いしたい。

 今は、県の諸施設も自分の所だけを考えればよい時代ではない。自分の情報発信は、同時に相互にかかわりのある諸施設のPRにもなるよう工夫すべきであろう。連携・協力すべき相手を柔軟な発想で見つけていくべきだし、何よりも縦割り的発想や惰性的な仕事の打破が必要なのだ、と私は思っている。

 こうした工夫は、常設展示の情報を新鮮にしていく方向へと発展している。「常設展示」のところをクリックしていただければ、情報が一新されつつあることを了解していただけるだろう。歴史博物館の情報はいつも新鮮で、かつ広がりのあるものへと変ぼうしつつある、とわたしは思っている。

 情報発信のシステム構築には、ある程度の予算が必要なのだが、今の財政状況では難しい。しかし、こうした情報発信には、予算がかからない。肝心なのはスタッフの工夫と努力なのである。幸いにも、歴史博物館ではこうしたサービスが館スタッフの日常的努力によって維持されている。歴史博物館のホームページは、毎月新鮮である。そして新しい情報こそ一番喜ばれる。

(上毛新聞 2004年10月25日掲載)