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中小企業診断士 小谷野 善三郎さん(神奈川県横浜市)

【略歴】太田高、中央大第二法学部中退。中小企業診断士、行政書士。経営コンサルタント事務所主宰。行政書士・経営コンサルタントの二十五年間に会社設立・開業支援を行った企業は百余社、経営指導は四百社に及ぶ。

建設業界の今後


◎長期的な経営計画を

 平成のバブル崩壊後、低迷を続けた日本経済も、ようやく回復に向かい、特にトヨタ自動車工業が史上最高の利益を上げるなど、製造業の回復には目覚ましいものがありました。しかし、非製造業の小売り、建設は回復が遅れ、小売業最大手のダイエーが産業再生機構の支援を受けるなど苦難の中を歩み、建設業界はバブル崩壊以降ほぼ一貫して低迷を続け、日本経済回復の足を引っ張る存在となってしまいました。

 建設業は国内産業、地場産業であるため、時の政治や国内景気に左右されやすく、公共工事、民間の設備投資の減退は規模の大小を問わず、業界全体に苦しい経営を強いることになり、その結果、倒産件数も全産業を通じて最も多件数となりました。今後の建設業界を浮揚させる要因も容易に見つからず、厳しい経営を強いられることが続くものと思っております。

 そこで建設業界の外に視野を広げて、長期的展望に立った経営計画を考える必要があるのではないでしょうか。例えば最近のニュースで、介護保険受給者が三百四十万人、給付額が五兆四千億円に達したと発表がありました。しかも、その受給者と給付額は年々増加が見込まれていると。

 介護保険法の施行以来、老人介護施設は年々増加し、施設の増加は被介護者の増加を招来し、介護業務従事者の大幅増員となって、労働人口を吸収しました。しかし、この分野は国の経済発展に寄与する分野ではありません。

 介護保険にとって最も重要なことは、要介護者を増やさないことです。引退後の高齢者の健康管理が充実していれば、要介護者の増加を防ぐことができましょう。そこに新しい産業の展開が期待されます。特に地方の高齢化が進んでいる地域には、こうした新産業が芽生える必然性があるのではないでしょうか。超高齢化社会を迎える日本のシルバーマーケットを考える一例として提案しました。

 政府の中小企業施策として、ベンチャー企業の育成、企業再生・新分野進出等が勧められ、経営指導や金融支援等の諸施策が講じられております。企業の長期展望に立って、会社の進むべき道を模索することが必要です。

 最後に現実の経営上の問題、資金繰り改善の一方策を紹介します。資金繰り改善方法の一つとして、売掛債権担保融資保証制度があります。従来、中小企業が金融機関から資金調達をするためには、連帯保証人のほかに不動産を担保として差し入れし、かつ信用保証協会の保証を求められました。この制度は連帯保証や担保差し入れに代えて、売掛債権を担保として信用保証協会が別枠保証して融資を実行するもので、平成十六年二月からは、売掛債権の掛け目が70―100%に引き上げられました。

 この制度利用には、売掛先・金融機関の了解が必要となりますが、契約内容・債権存在を客観的に確認できる資料を提示することにより利用可能です。中小企業経営者の財産保全の一方策として紹介しました。いまだ金融機関の融資態度の厳しい中にあって、ぜひ活用をお勧めします。

(上毛新聞 2004年10月31日掲載)