視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
上野村森林組合参事 黒沢 一敏さん(上野村楢原)

【略歴】万場高卒。シイタケ栽培など農業経営に取り組んだ後、高崎市内の生協職員となり店長に。01年から上野村森林組合に移り、総務課長を経て、現職。

日本の林業再生


◎外材輸入の削減が急務

 今から四十年前、父と一緒に植林した山は伐期に達している。当時、父は「一本一万円、三千本あれば三千万円のよい退職金になる」と言いながら、わずかな蓄えで苗木を買い、子孫のために残すと、気の遠くなるような思いで植林に取り組んだ。現在の材価はどうだろうか。杉一本、立木で五百円にもならない状況である。まさに林業経営の破は綻たんである。

 材価の暴落の大きな原因は日本の外材輸入である。フィリピン、ボルネオの南方材からはじまり、ロシア、アラスカの北方材、カナダ、アメリカの北米材、はたまたニュージーランド材に至るまで、世界各国で森林伐採が続けられ、その大半が日本で住宅建材、家具材として消費される。日本のなりふり構わない海外での木材調達は、常に発展途上国に向けられる。

 残念なことに、世界最大の秘境アマゾンの原生林奥地でも伐採が始まっている。発展途上国は外貨獲得のために、環境よりも森林伐採を優先してしまうのである。世界的な森林伐採により森林資源は枯渇し、環境に大きな影響を与えている。昨今、中国政府は木炭の輸出禁止を発令したが、もともと中国の台地に木材が豊富にあったわけでもなく、森林伐採により表土の流失、砂漠化が進行し、森林再生が不可能なほど深刻な問題となっていたのだ。

 一方、早くから森林伐採の行われた東南アジア各国でも、森林破壊の現状を憂いて日本の民間の環境保護団体、NGO(非政府組織)等が立ち上がり、森林を再生すべく植林が始められている。日本国内では材価の暴落にあえぎ、海外では森林伐採による環境への影響が深刻化し、森林再生運動まで起こっている。それにもかかわらず、一向に木材輸入は減少しない。一体どうしたことか。日本の林政は根本的な矛盾をかかえたまま、小手先で国内材利用推進、温暖化対策、水源涵かんよう養等を唱えるのである。

 多くの森林組合員が木材価格の暴落により、林業経営を断念し、林業は国、県の補助事業により森林組合が辛うじて森林を管理維持している。しかしながら、その頼りの綱の補助事業も大幅に削減され、森林組合さえも成り行かない深刻な状況となっている。そんな現状を危ぐし、多くの自治体で国産材の利用喚起に取り組んでいる。

 わが上野村では、役場が村単独で毎年八十ヘクタールほどの森林の整備を進めてきた。黒沢丈夫村長は「中央の役人に山村の痛みが分かる人が少ない。上野村が全国に先駆けてモデルの森林整備を実施し、山はこうあるべきだということを林野庁長官に直接見てもらい、林業の必要性を訴えたい。上野村でやっていることを国でやってもらうんだ」と歯がゆい林政を批判。さらに「林業がだめ、公共事業の就労の場も減っている。行政が何とかしないと村民が暮らせない」と、多くの町村が持つ悩みを代弁して訴えた。

 いろいろ記述したが、この問題を解決する方法は一つしかないという私的判断に達したのである。つまり、森林伐採による環境問題、国内の森林経営の健全化など、多くの問題の解決には、日本が本気で外材輸入を削減できるかどうかである。この問題は日本の政治判断に委ねざるを得ないのである。早急に抜本的対策を講ずるよう、願わずにはいられない。

(上毛新聞 2004年11月18日掲載)