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県立女子大学教授 片桐 庸夫さん(新町)

【略歴】慶応大大学院法学研究科博士課程修了。法学博士。専攻は国際関係論、外交史、政治学。著書『太平洋問題調査会の研究』で04年度吉田茂賞受賞。

安心・安全な街づくり


◎増やしたい防犯カメラ

 今年一月から九月にかけて県内で発生した刑法犯は、昨年同時期と比べ9・1%増加した。ちなみに、栃木県の刑法犯は4・1%、茨城県は16・8%の減少を示している。さらにショッキングなのは、群馬県警の頑張りもあって、検挙件数は34・6%増と、埼玉県に次いで全国二番目という好成績を達成しているにもかかわらず、刑法犯の増加率が全国ワーストワンという事態に立ち至っていることである。そういった数字から、「なぜ群馬だけが?」という印象を持つ読者も少なくないと思う。

 反対に、「やはり」と感じられた読者も少なくないと思う。なぜなら、自転車を盗まれるといった類を含め、身近なところで犯罪被害に遭う人が増えていることから、体感治安の深刻化と称される日常生活に不安を感じる人が増えているからである。逆に、人のものをちょっと借りるような気持ちで自転車を盗んだり、コンビニ、スーパー、書店などで万引をはたらくといった具合に、軽い気持ちで罪を犯す人も増えている。

 以前は、有名性社会といって、住民は互いに顔見知りで、協力し助け合う共同体を形成していたことから、犯罪もそう多くは起こらなかった。現在は匿名性社会といって、近所付き合いがなかったり、マンションの隣部屋の住人がどんな人か分からないといったことが珍しくない世の中になり、地域社会の連帯機能が低下している。さらに自動車の普及によって、人々の移動の距離は長く、速くなっている。インターネットの普及は、そうした傾向に拍車をかけている。そのような中、犯罪は加速度的に増加し、警察の犯人検挙率は年々低下し、戦後最低記録を更新し続けている。まことに残念かつ厳しい状況にある。

 そうした時代に、安心・安全な街づくりを進めるにはどうしたらよいのだろうか。

 私は、(1)自治体がもっと地域住民によるパトロールといったボランティア・グループを支援する(2)もっと多くのボランティア・グループがそれぞれの地域の実情に即した防犯活動に取り組むように働きかける(3)ボランティア・グループ同士が情報交換を積極的に行い、犯罪防止の効果的方法やアイデアなどについて互いに学ぶ(4)警察と県市町村、ボランティア・グループの三者が協力・連携関係を従来以上に深める(5)警察が交番やパトールを通じて地域住民との距離をもっと縮めて協力関係を深める―ことを提案したい。そして、警察が地域住民に犯罪発見時の簡明かつ具体的な協力方法を知らせて、通報の実をあげ、見て見ぬふりをしがちな人を減らすといった工夫が必要ではないか、と思う。

 住民の安全な暮らしを守るために有用な防犯カメラは、既に太田市の繁華街、高崎駅西口と東口、慈光通り、井野の団地、前橋駅北口などに設置されている。それに対し、防犯カメラの設置によって自由が失われるとの懸念から反対する人もいる。しかし、今は地域社会の安全を強化しない限り、住民の自由と安全は確保できないとの立場から、防犯カメラの設置台数を増やす方向で努力すべきであると考える。

 最後に、地域住民、ボランティア、各自治体、県警がそれぞれのノウハウを生かしながら、協力して犯罪の起こりにくい街づくりや地域開発の在り方を提案することを望みたい。

(上毛新聞 2004年11月24日掲載)