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新生会・地域生活支援センター所長 鈴木 育三さん(榛名町中室田)

【略歴】立教大大学院応用社会学研究科修了。聖公会神学院専任講師を経て、84年から社会福祉法人新生会理事。地域生活支援センター所長。群馬いのちの電話評議員。

いのちの電話


◎同じ時代の仲間として

 初冬の風が身に染みる今日このごろとなりました。ここ数年、自殺者は年間三万人を超えています。さまざまな理由から悩み、苦しみを覚えている人々が、自死の道を選ばざるを得ないのは悲しい現実です。毎年、この時期に「あなたの苦しみを受けとめる電話」として『自殺予防 いのちの電話』(フリーダイヤル0120・738・556)が開設されます。あす十二月一日から七日まで、日本いのちの電話連盟全国五十一局の『いのちの電話』がネットワークを組み、相談支援活動に当たります。

 「群馬いのちの電話(027・221・0783)もこの期間、フリーダイヤル『自殺予防 いのちの電話』を開局します。

 現代社会は「待つことを忘れた時代」といわれるほど、多忙です。日々、加速化されるスピードが、進歩発展のしるしのように錯覚され、情報は人と人との間を豊かに結ぶより、人と人の間に心の解離をいっそう深めています。

 今から五十年前、ロンドンの一隅で一人の少女の訴えに傾聴することから始まったこの運動は、現在、世界七十カ国に広がっています。

 日本で最初に「いのちの電話」が誕生したのは、一九七一年のことでした。「いのちの電話」の生みの親、ルツ・ヘットカンプ女史は「いのちの電話」運動を始めるとき、多くの有識者が「日本ではボランティア活動は育たない。まして、社会的使命が高く、持続性、匿名性を必要とする電話相談活動は成功しないのでは」と危ぐするのを聞いたそうです。

 今から三十年前、英国の小さな町、アマーシャムの「サマリタンズ」(英国版「いのちの電話」)を訪問したとき、ボランティアの婦人が「『サマリタンズ』の働きに参加できるのは、市民としての誇りです」と語られ、「ビフレンディング(BEFRIENDING)」と書かれた小さなステッカーを手渡してくれました。

 この言葉は、「援助する、友人となる」という意味があります。上下の関係ではなく「共に立つ援助活動」「友愛の市民運動」と解することができるでしょう。

 その精神は、同じ地域に生活する住民、市民が、互いに配慮し合う「友だちする」社会活動です。制度や政策によるのではなく、自発的に同じ時代を生きる仲間の一人としてボランティア活動を通じて社会貢献している姿に強い感動を覚えました。

 「群馬いのちの電話」は、今から十二年前に全国で三十六番目のセンターとして開局しました。以来、相談受信件数は十二万四千五百七十一件(一九九二年十月―二〇〇三年十二月)を数え、〇三年には一年間で一万五千六百八十六件の相談を受けました。

 現在、「群馬いのちの電話」では約百五十人の認定ボランティアが相談電話を受けています。全国では八千人の相談員が昼夜、ボランティア活動を行っています。

(上毛新聞 2004年11月30日掲載)