視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
NPO法人新里昆虫研究会理事長 小池 文司さん(新里村新川)

【略歴】東洋大卒。中学校教諭などを経て、すぎの子幼稚園、おおぞら保育園理事長。99年に発足し、03年にNPO法人に認証された新里昆虫研究会理事長。

里地里山


◎再生しよう豊かな国土

 きれいに管理された森や林があり、段々畑があり、棚田があり、せせらぎが流れ、小鳥たちがさえずり、ホタルなどの昆虫たちも飛び交い、カエルが鳴くような自然の四季折々が体感できるような、日本の農村の原風景が近年はすっかり姿を消してしまった。

 里地里山とは、奥山地帯と都市部の中間に位置し、集落とそれを取り巻く二次林、それらと混在する農地、ため池、草原などで構成されている地帯である。この地域は、農林業などに伴う、さまざまな人々の働きかけを通じて、環境が形成され維持されてきた。この二次林や農地を主体とした地域の里地里山は、国土の約四割を占めている。

 かつて、里地里山は農家の生命線であり、人々が自然と共生して、自然の恩恵を享受した豊かな生活の営みがあった。

 里地里山の中心をなす二次林は、まきや炭の材料としてナラ、クヌギ、アカマツなどからなり、おおよそ十年から三十年ごとに伐採されていたため、樹木は小さく、明るい環境が広がっていた。このような二次林には明るい環境が好きなスミレ類、カタクリ、シュンラン、ツツジ類、クワガタ、ギフチョウなどがたくさん見られたものだった。

 ところが、日本の高度経済成長に伴う産業構造の変化で、農村の自然環境や生活様式が大きく変化してしまった。

 燃料がまきから石油やガスなどに代わり、二次林の利用や伐採がなくなると、樹木が大きくなってカシなどの常緑広葉樹やササ、竹が増えて、林は暗くなり、生息していた生き物も次第に激減の一途をたどっている。

 水の豊かな日本では、いろんなところに水田が作られ、水田とその周りのため池、せせらぎなどは、カエル、ホタル、メダカ、トンボなどの水生昆虫や多くの水草の重要な生息地となっていたものだ。しかし、減反に伴い、水田の面積は徐々に減少している。特に、昆虫などの生き物の多い谷間の水田は真っ先に消えてしまった。また、ため池やせせらぎなどの水路の岸辺がコンクリート護岸になって、水生昆虫などの生き物の姿がめっきり少なくなってしまった。

 里地里山の保全再生は、日本の自然豊かな国土づくりに重要な課題である。

 環境省では、本年度から全国四地域で、里地里山保全再生のモデル事業を開始した。この事業は国家・行政が全国的な規模で取り組むことが大事と考える。

 環境省などは今年六月に「日本の里地里山三十―保全活動コンテスト―」を実施した。これに当会も入選の栄誉に浴したが、NPOなどの民間団体が自主的に保全再生活動を実施している現状もある。

 二十一世紀は環境の時代ともいわれるが、将来の子供たちのために、また、緑の豊かな地球のためにも、地球の小さな活動が拡大し、官民一体となった国家的な大事業となるよう期待している。

(上毛新聞 2004年12月18日掲載)