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NPO法人たかさきコミュニティシネマ代表理事 茂木 正男さん(吉井町下長根)

【略歴】高崎工高卒。高崎映画祭事務局長を経て同事務局代表。全国コミュニティシネマ支援センター副委員長。04年6月から現職。NTTビジネスアソシエ群馬社員。

県内初のミニシアター


◎実現したい豊かな環境

 県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」が今月四日オープンした。県内では見ることができなかった単館系映画館(銀座、渋谷、恵比寿、新宿)の新作を中心にロードショー公開されることになる。オープン前日の三日には内覧会が開かれ、高崎市長をはじめ北海道から九州熊本、都内からもミニシアターの支配人やコミュニティーシネマ活動に携わる方々まで総勢百五十人の関係者が集まり、「シネマテークたかさき」のオープンを祝った。

 オープニング作品は『珈琲(こーひー)時光』と『天国の青い蝶(ちょう)』。さらに『僕セザール10歳半1m39cm』『アフガン零年』『永遠のモータウン』『父、帰る』『やさしい嘘(うそ)』『お父さんのバックドロップ』など、県内初公開作品が続くことになる。

 そもそも高崎駅西口にミニシアターをつくると言い出したときに、決まって返ってくる言葉があった。「東口にシネコンがあるのになぜ?」。僕たちは、こう考えていた。高崎映画祭が一九八七年に始まったとき、高崎駅西口には四館九スクリーンの映画館が営業していた。東映、松竹、東宝それぞれの直営館とオリオン座であった。それも二〇〇三年の春に西口の映画館はすべて閉館となっていた。街中に映画館を再生したい。これが一つ。

 現在都内で公開される映画(邦画、洋画合わせて)に対して、県内で見られる映画の割合は四割に満たない。半数以上の映画、特に邦画はそれ以上の割合で上映されていない。地方で豊かな映画環境の実現を目指し、活動を始めたコミュニティーシネマ運動のモデル地区になっている高崎で、全国に先駆けてこのパーセントを上げて映画ファンに一本でもたくさんの多様な映画を見ていただこうとした。これが二つ目である。

 ミニシアターとして再生した建物は六六年に建てられ、間もなく四十年を迎えようとしている。これを取り壊さずに、建築基準法をクリアして劇場として使用するには耐震補強をはじめ、さまざまな問題点に直面した。これを何とか映画館として再生し、運営を軌道に乗せていきたい。全国各地の駅前には金融合理化で閉店した銀行、信用金庫、生命保険会社など、使用されずに眠っている建物が多い。行政や商工会議所、商店会の皆さんに利用例として参考にしてもらえるのではないか、と考えた。これが三つ目である。

 あえて、もう一つ挙げるとしたら、「映画教育」をスタートさせたいことである。いま本県では、小栗監督を中心に小学校高学年の生徒に教育現場で映画教育を始めようとしている。私たちのようにコミュニティーシネマ活動を推進しているNPO(民間非営利団体)法人の仲間たちも、文化庁とともに日本映画の振興と「映画教育」を本格的にスタートさせている。

 こうした環境下で県と連携して小学生、中学生、高校生に世界の名画が日常の中で見られるようにと考えている。オープンして三週間がたった。建物にかけた時間に比べて、上映作品や場所のお知らせが不十分だったように思う。一作品、一作品を大切に紹介していくことが、何よりも求められていると思う。

(上毛新聞 2004年12月26日掲載)