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県立がんセンター院長 澤田 俊夫さん(大泉町朝日)

【略歴】北海道出身。東京大医学部卒。同学部第一外科入局、同講師、県立循環器病センター副院長、県立がんセンター副院長を経て、04年4月から現職。医学博士。

がんの予防(上)


◎努力で危険性減らせる

 わが国における死亡原因の第一位はがんです。がんによる死亡数は年々増加の一途をたどり、今や三人に一人ががんで亡くなる時代といわれています。

 がんで死なないためには、いくつかの方法があります。まず第一は、当然のことですが、がんにかからないことです。しかし、がんの原因は分かっていませんので、根本原因を除去することはできません。がんは遺伝子の病気とされていますが、どの遺伝子に異常があると、どういうがんになるのかということは分かっていません。多くのがんは複数の遺伝子がいくつもの段階で互いにかかわり合って発生すると考えられています。

 喫煙や食生活、飲酒などの生活習慣が、がんの発病に大きくかかわっていることが分かっています。従って、日常生活でがんにならないように努力することは大切です。細胞のがん化を防ぐことを「一次予防」といいます。一次予防の代表的なものが禁煙です。

 禁煙をはじめとして、自分たちの努力でかなりがんになる危険性を減らせることが分かっています。たばこが原因で死亡する人の数は、全世界で毎日、ジャンボジェット機十六機分といわれています。また、たばこを吸っている本人だけでなく、副流煙といって、他人のたばこの煙を吸って受動喫煙してしまう危険性もあります。

 また、高脂肪の食品や塩分の摂とり過ぎなども、がんの原因になりますので、避けなければなりません。とても内容が具体的ですので、米国の「がんにならないための十五カ条」を紹介します。

 (1)食事は主に植物性の食物を選ぶ(2)体重はBMI(Body Mass Index 体格指数=体重・kg÷身長・m÷身長・m、BMIは理想体重の指標として広く用いられています。最も病気にかかりにくいBMI値は22とされます)を18・5―25に維持し、成人になって五キロ以上体重を増やさない(3)運動は一日一時間以上の活発な歩行と週最低一時間以上の激しい運動を行う(4)豊富な種類の野菜、果物を一日四百―八百グラム食べる(5)豊富な種類の穀類、根野菜を六百―八百グラム食べる。

 また(6)アルコール飲料は勧められない。飲むなら男性は二杯以下、女性は一杯以下に控える。一杯はビール二百五十ミリリットル、ワイン百ミリリットル相当(7)肉(牛、豚、羊肉)は一日八十グラム以下。魚肉、鶏肉の方がよい(8)動物性脂肪食品の摂取を控え、植物性脂肪を適度に摂取する(9)食塩は成人一日六グラム以下、調味料にはハーブやスパイスを使う(10)カビ毒汚染の可能性のある長期貯蔵の食品は食べない。

 さらに(11)腐敗しやすい食品は冷蔵保存する(12)適切な規制下での添加物、残留物は問題ない(13)焦げた食品は食べない(14)勧告の他の項目に従えば、栄養補助食品の摂取は不要(15)たばこは吸わない―。以上です。参考にしてください。

(上毛新聞 2004年12月27日掲載)