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日本釣振興会県支部長 秋本 國勝さん(高崎市上中居町)

【略歴】高崎商卒。全日本フライキャスティング大会チャンピオン。県内水面漁場管理委員、県「瀬と淵を取り戻す」検討委員。フィッシングショップ・アライ経営。

ブラックバス問題


◎密放流しないが条件に

 近年「自然環境を守る、保護する」という機運が、年々高まっています。それに関連して最近、注目されているのがブラックバスという魚です。

 北米原産の淡水魚で、自分の産んだ卵や子供を親が守る習性から、生存競争には強く、食性は小魚や水生昆虫など生きている物を食べます。日本に移入されたのはかなり以前ですが、今から三十年ほど前から、全国的に生息範囲が広まり、湖、ダム湖、沼、用水池など、多くの止水域で繁殖し生息しています。そして、スポーツフィッングの好ターゲットとなり、多くの若者に人気を集めています。

 そこで問題になっているのは、「今まで日本にいなかった魚が全国に繁殖し、昔からの水生生物に大きな影響を与えている。漁業組合の放流した魚が食べられている。だから駆除すべきだ」と主張するグループ。また、「水生生物に、そんなに影響を与えているとは思えない。駆除するのではなく、むしろ資源として有効利用すべきだ」と主張するグループに二分され、どちらを支持していいのか、複雑で難しい内水面事情になっています。

 両者の意見は、両者の主張を支持する学識経験者などの人たちによって、全国各地で何度も意見交換が行われてきました。私は、そのゆくえを興味深く見ていました。しかし、両者の意見をより強く主張したにとどまり、進展は見られませんでした。そして、こうなるであろう結果も予測していました。長い年月がそうさせたのです。最初は芦ノ湖だけにしかいなかったブラックバスが、長い年月の間、自然の力や、繰り返された密放流によって、全国に拡散し繁殖しました。

 ブラックバス(以下、バス)の居る所には、いつでも見かけるほど増えたバス釣り人口、その遊魚者にボートを貸す貸しボート店、漁業組合、釣り場周辺の飲食店、旅館、民宿、コンビニ、ガソリンスタンド、バス釣り道具を作るメーカー、小売店、雑誌社などなど、バスによる収入にたよっている人たちは数知れず、全国で何百万人いるか分かりません。その現実の中で、いきなり「バスはすべて駆除」と言って、白黒つけようとしても、いささか無理があるように思えます。

 長い年月によって、今日のようになってしまったバス問題、白黒のほかにグレーがあってもいいと思う。それには、暫定的にバスが居ていい場所と、居ては困る場所に分け、時代とともにより白に近づくのか、より黒に近づくのか、話し合って決めていけばいいのではないでしょうか。

 しかし、この考えには、バスを釣りたい人たちが、守らなければならない条件があります。それは、「密放流は一人も絶対しない」という条件です。誰かが密放流するとすれば、それを自分のことと受け止め、阻止する正義感まで求められます。そこまでしなければ、この考えは成立しません。

(上毛新聞 2005年1月25日掲載)