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県立女子大学教授 植村 恒一郎さん(鴻巣市赤見台)

【略歴】東京都生まれ。東京大卒、同大学院修了。県立女子大教授。哲学者。著書「時間の本性」(勁草書房)により、02年度和辻哲郎文化賞を受賞。

未婚率なぜ上がる


◎男女とも欲求に変容が

 女性のキャリアを考える上で、「結婚」の問題は避けて通れない。大学に入りたての若者も、自分の結婚について漠然とした不安をもっているようだ。講義で次のように話したことがある。統計では結婚の九割が恋愛結婚だが、皆が皆、フランス映画にあるような恋愛をしているとは思えない。もともと性格的に恋愛に向かない人が、三割はいるのではないか、と。

 すると、学生から匿名のメールがきた。「先生の話を聞いて救われました。自分はどこか人間性が欠如しているのではないかと、ずっと不安に思っていました」。誰もが恋愛するのが当然のように言われているが、それは一方でプレッシャーにもなっている。

 国勢調査によれば、未婚率が大幅に上昇している。女性についてみれば、二〇〇〇年の時点で、二十五―二十九歳の世代で未婚率は54%、三十―三十四歳では26・6%である。一九七〇年には、それぞれ18%と7%だったから、大きな違いである。しかも、最近は五年ごとに数値が急上昇している。九〇年と九五年の数字を見ると、二十五―二十九歳でそれぞれ40・2%から48%へ、三十―三十四歳では13・9%から19・7%に上昇している。つまり、どちらの世代も五年ごとに約6―8ポイントも上がったわけだ。

 今年は二〇〇五年だが、結果はどうなるだろうか。元日の新聞報道によれば、〇四年の婚姻数は前年より一万五千組少ない七十二万五千組だったという。第二次ベビーブームに生まれて、現在三十歳前後の人口の多さを考えると、未婚化の傾向は変わっていないことが分かる。そして、それぞれの世代における男性の未婚率は、女性よりさらに15%以上数値が高いのである。

 数字だけではない。私の周囲をみても未婚者が増えている。不況で定職に就けない若者も増えたが、定職にあっても皆それぞれに忙しく働いている。

 結婚したいと漠然と思っていても、実際の行動に踏み出すには、その時間やエネルギーがあまり残っていない。三十代前半ともなれば、それまでに確立したキャリアと生活様式を変えたくない気持ちも強まるだろう。働いている女性が結婚して専業主婦になると、自分の収入を失って経済力が低下する。だから相手は高収入の男性であってほしい。だが、そういう男性は少ない。

 結婚難については「女性は結婚できるが、しない」「男性は結婚したいが、できない」とか、「いい女は多いが、いい男は少ない」などと興味本位に語られることがある。だが、そうした見方は表面的にすぎるだろう。原因はもっと根本的なところにある。高学歴女性のキャリアは、人間の生き方とその欲求水準を徐々に変えている。経済や不況が結婚の「足かせになる」のは、男女とも「ただ生きる」のではなく、「よく生きる」ことを無意識のうちに求めているからだ。

 人間の欲求のこうした深いレベルの変容を、どうしたら前向きに受け止めていくことができるか。これが現代社会の課題だろう。

(上毛新聞 2005年1月26日掲載)