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県ドッジボール協会副会長 横倉 興一さん(高崎市下佐野町)

【略歴】群馬大学芸学部卒。高崎市教委健康教育課長、高崎北小校長などを歴任。同市ドッジボール育成協議会長を務め、03年4月から県ドッジボール協会副会長。

青少年への生き方伝授


◎女性の力が手掛かりに

 青少年の心と体が年々やせ細っていくと感じるのは、私一人だけだろうか。やせ細る原因の一つに「未来に夢を持ち、地に足を着けて歩む力」の低下が考えられます。特に足元に目を向けて、問題を自力で解決していく力の不足が目立っています。この問題点は、先の臨時教育課程審議会において重視され、総合的な学習、体験学習において育てるべきと強調されていました。学校五日制も、この線上にある教育政策です。

 その後十余年が経過し、小学校の低学年児童も高校生となっています。青少年の問題行動や日常の考え方や行動様式を見ていると、多くの教育政策と実践がいまだ効果を挙げていないと感じざるを得ないのです。かつ、新しいストレスが青少年の環境を悪化させている現状は皆さんのよく承知するところだと思います。

 なぜ、効果を挙げることができなかったのか。原因の一つに、われわれ大人が学校教育と連携して、足元に目を向けた着実な生き方を青少年に伝授してこなかった、と考えています。生き方伝授の方法は、決して難しいことではなく、身近な問題に取り組む街づくりや村おこし、街の活性化の取り組みに近いものと分析することができます。近ごろ、NHKのテレビ番組で、その成功例が放送されているので、多くの方が知っていることと思います。

 ただし、この番組の成功例も「未来に夢を持ち、地に足を着けて歩む力」を地域の青少年に伝授する役割を持つという視点に立つならば、幾つかの点を改善しておく必要があります。まず、女性が有償であれ無償であれ、地域の経済活動や福祉活動に積極的に進出できる場をつくり、経済的にも精神的にも「この街に住みたい、住み続けたい」と愛着心が持てる環境にしなければなりません。特に、福祉的活動は女性の特性を生かせるところでもあり、高齢者や幼児の支援活動に欠かせないものです。

 従って、この活動を通して女性が地域の問題解決に大いに役立っているという自覚が育つのであり、女性(母)の自覚こそ青少年に地に着いた生き方を伝授する手掛かりになると考えています。そのためにも、小中学生の放課後の生活支援に十分配慮する必要があり、学校施設のさらなる開放と支援体制の確保が重要だと思います。この女性力を地域に生かすコーディネーター役としてPTAの役目も検討する必要がありそうです。

 また、総合的な学習は、ときに校外に飛び出て、地域課題の解決に向けて地域の人々とともに取り組む学習としなければならないでしょう。学校教育だけでは二分の一にすぎないことを肝に銘ずべきと思います。

 これらの結果として、足元を見据えて歩む力と地域に生きる心を育てることが可能になるでしょう。私は、この「地域に生きる力」を伝える力を「地域力」と定義しています。地域力は地域を強く結び付け、地域力が再び広がることにより地域の経済的、精神的空洞化を少しでも防ぐことが可能になると考えています。

 一日も早く地域と学校が連携を図り、組織的に豊かな心の青少年の育成に取り組みたいものです。

(上毛新聞 2005年1月27日掲載)