視点 オピニオン21
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ERCエコリサーチセンター代表 江原 稔之さん(千代田町下中森)

【略歴】館林高校卒。半導体関連企業を退職後、環境保全支援ERCエコリサーチセンター創設。環境に優しい農場を経営するとともに、住環境を考えライフケア事業も展開中。

地域の自然保護


◎行政・企業・住民の手で

 環境保全活動支援の仕事をしていると、いろいろな人とお話しする機会が多くなり、話の内容も多岐にわたり、私自身も大変勉強になります。

 先日も、個人で環境保全に取り組んでおられる邑楽町の天笠久美子さんから電話があり、お会いする機会を得ました。初対面でしたが、話が弾み、時のたつのも忘れていました。天笠さんは、自宅近くの自然が壊されていくのが残念でならないそうです。特に、小川の汚れがひどいそうで…。「昔はメダカや小魚がいっぱいいたのが当たり前のように思っていたのに、今はどうですか。まるでどぶ川ですよ!」と真剣におっしゃる姿に心を打たれました。

 さらに驚いたのが天笠さんの行動力です。自分で勉強するため、バイオマスや光触媒、環境保全などの本を購入して、環境保全活動を自ら実践していることです。実践例として、掃除はこんな方法で行っているそうです。ボールに薄めた酢水を作り、冷蔵庫の中や床、照明器具、窓ガラスなどが二度ふきなしできれいになり、においもないそうです。また、カーペット掃除は、重曹をふりかけておき、先ほどの酢水につけた雑巾でふき取ると色柄もくっきり、とてもきれいになるそうです。

 それから、電気ポットの頑固な水あかなどは、まず二〇〇CCくらいの酢を入れ、水をポットいっぱいまで注いでスイッチオン。そのまま四―五時間置いておくと、かなり頑固な水あかも取れ、感動ものだそうです。それに何といっても酢ですから安心・安全で、小さいお子さんが手にする物もふき取ることができ、化学物質過敏症・環境アレルギーなどにもよいそうです。

 私は、天笠さんのお話を伺って、環境保全は誰かがしてくれる、自治体の仕事だと思っている人が多い中、自ら実践しておられることに感動しました。私も、環境保全研修会やISO14001セミナー開講のときに必ずお話しするのですが、地域の自然保護は行政・企業・住民の三位一体活動がもっとも大切で、行政が主体となって進めるのがベストだと思っています。残したい自然(財産)があるのですから、真剣に議論を重ね、あるべき姿を描き、取り組むことが環境保全につながるのです。

 今は、地球環境の危機です。温暖化も進み、異常気象などにより大災害も発生している今日、天災で済ませるわけにはいかないのです。本当に行政が、企業が、個人が、何をなすべきかを真剣に考える時期にきているのです。現在、天笠さんと同様に個人で、あるいは地域ボランティアで、環境保全を積極的に行っておられる方々が多くなってきたことは喜ばしいことですが、まだまだ一部の活動です。

 ただ、こういう活動が多くの場で紹介されれば、トリガーとなって、関心のある皆さんが参加する、実践することになり、小さな輪が大きな輪に広がるでしょう。ぜひ行政指導の下、活性化することを望みます。その気になったときがチャンス。チャンスを逃さず地域自然保護の輪を広げたいものです。

(上毛新聞 2005年1月29日掲載)