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板倉町民俗研究会会長 根岸 昭雄さん(板倉町板倉)

【略歴】板倉高卒。農業に従事。板倉町議5期。元町議会議長。板倉町民俗研究会会長として伝統文化や民具などの調査、保存活動。著書に「庶民信仰をたずねて」。

大震災の教訓


◎コミュニティー復興を

 阪神淡路大震災から早くも十年がたちました。災害は忘れたころにやって来るという諺ことわざがありますが、忘れないうちにやって来たのが、新潟県中越地震でした。

 昨年末にはインドネシア、スマトラ沖の地震は、周辺各国に歴史上類をみない大津波の被害をもたらしました。

 世界中、異変が起きてます。台風の異状な発生数や、世界各地の大水害…。これらの出来事は、人類に対して何を意味するのか、人間社会がつくり出した異常気象の結果であるとすれば、深刻な問題です。

 防ぎようのない大自然の営み、いつ来るか分からない災害に対して、どのような備えが必要なのか。日ごろの心構えと心の準備が大切であることを、教訓として学びました。

 災害救援活動の中でも、ボランティアの活動の素晴らしかったこと、身の危険も顧みないで活躍した救助隊員、地域住民の結束、高齢者や弱者に対する思いやりなど、人間社会も捨てたものではないと感動しました。

 余震の続く被災地の中で、新しい市が誕生したニュースにも驚かされました。今、この緊急時に合併が必要なのか、不思議に思いました。災害復旧や避難救助などは、地域のコミュニティーが一番大切だからです。

 私は日ごろから、市町村合併の在り方について疑問を持っております。賛否両論がありますが、まず合併ありきでスタートするのが問題です。

 合併法定協議会まで進みながら、庁舎の設置場所や町名の問題で白紙撤回するような市町村があまりにも多すぎる。行政の効率化や合理性、能率優先だけの合併に問題があると思います。地方行政の在り方は、住民本位に考えなくてはなりません。住民の幸せや、心の豊かさを追求しながら地域の特色を生かし、幸せな生活を送ることができるようにする、これが本来の姿です。

 三位一体の政策がどれだけの効果をもたらすか、不透明です。国の財政が困窮しているからといって、地方が合併して財政負担の軽減を計ることには反対です。地方には地方の特色があり、小さな村なりの素晴らしさがあります。

 自立で進もうとする町村に対して温かい手を差し伸べることこそ、国に与えられた使命であると、私は思います。

 震災復興から十年たった神戸や大阪の街並みは、震災前と変わらぬ姿になったが、心の傷あとやコミュニティーは、まだまだ復興されていないそうです。

 中越地震で村中が避難生活を送っている山古志村ですが、被災地から取り寄せた稲わらで塞神(さいのかみ)(どんどん焼)の神事が行われました。雪の中でのこの神事は、村人の心を一つに結集したに違いありません。久々の村人の笑顔でした。これで、春を待つ希望がわいてきたという老人の顔に心を打たれたのは、私一人ではないと思います。山古志村の人々は、事あるごとに村の鎮守に集まり、神に祈り、助け合いながら長い歴史を繰り返してきました。一日も早く、素晴らしい村が復興されることを祈りたいと思います。

(上毛新聞 2005年2月3日掲載)