視点 オピニオン21
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フリージャーナリスト 立木 寛子さん(東京都江東区)

【略歴】前橋市生まれ。新聞記者を経て84年からフリー。医療関連分野を中心に取材執筆。著書に「沈黙のかなたから」「ドキュメント看護婦不足」などがある。

手術勧められたら


◎ほかの医師の診断必要

 左手親指の内側中央部に、小さなしこりができた。数年前に気がついたのだが、そのままにしておいたら、昨年春ごろから徐々に成長し始め、結構な大きさになった。直径五ミリくらいだろうか。皮膚の上から触ると、丸くツルツルした感触でよく動く。痛みはないが、食器を洗っているときや洋服を着たり脱いだりする際にしこりにあたり違和感を覚えるようになったので、思い切って診察を受けた。昨年五月のことである。

 最初に行ったのは、かかりつけの内科医院。診察の結果、良性の軟部腫瘍(しゅよう)(ガングリオン)ではないか、ということだった。専門が違うので、より詳しい診断をしてもらった方がいいということになり、総合病院の整形外科医を紹介された。整形外科の中でも、特に手の病気を専門にしている医師だということだった。

 紹介状を書いてもらい、早速、その医師の診察を受けた。結果、神経にできた腫瘍であるとの診断だった。「悪性のものではありませんが、放っておけば大きくなるでしょうから、手術をした方がいいと思います」との勧めを受けた。

 切らなければいけないだろうと覚悟はしていたものの、神経腫瘍とは思いがけないことだった。手術を受けた際の後遺症について尋ねたところ、約五割に痺しびれなどが出るだろうということだった。それを聞いて、腰が引けてしまった。手術を強く勧められたが、結論を出さなかった。

 しばらくそのままにしていたのだが、気になるので、別の手の専門医を訪ねた。「神経腫瘍との診断でした」と告げると、その医師は時間をかけて私の親指を触診し、首をかしげた。そして、こう言った。「神経にできた腫瘍ではないと思います」

 その医師が、医学書に書かれた手の解剖図を指し示しながら説明してくれた。それによれば、親指の神経は指の外側をぐるりと囲むように走っていて、指の内側真ん中あたりにはない。神経がないところに神経の腫瘍ができるはずがないというのである。ガングリオンとは別の、良性のできものである、というのがこの医師の診断だった。治療についても、「日常生活に著しく支障がない限り手術する必要はなく、放っておいてもいいでしょう。場合によっては消えてしまうこともあります」ということだった。

 なぁんだ、とほっとしたとたん、医師への疑問がわいた。神経腫瘍は誤診だったのだろうか―。手術をすれば、それ相応の医療費がかかる。外科医は手術を勧める傾向にある、という指摘もある。

 「診療費(病院の収入)を増やし、手術症例も増やしたかったから」などとは思いたくはない。となれば、今後同じようなことが起きたときの結論はひとつ。病状の程度を問わず手術を勧められたら、緊急性がないかぎり、ほかの医師の診断を仰ぐ―つまり、セカンドオピニオンが必要だということだ。

 最後の診察から半年ほど過ぎたころ、指のしこりが小さくなっているのに気づいた。そして今、ほとんどなくなりつつある。

(上毛新聞 2005年2月7日掲載)