視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
群馬大学社会情報学部教授 黒須 俊夫さん(前橋市天川大島町)

【略歴】栃木県真岡市生まれ。宇都宮大卒後、東北大大学院教育学研究科に進学。教育学博士。宮城教育大助手、群馬大教養部助教授を経て、93年から現職。

詐欺への対応


◎まず家族や友人と相談

 「最終通告」というはがきが友人宅に届いた。「貴殿のご利用された電子消費料金の未納分について、契約会社より回収業務の委託を受けましたので、通達させていただきました」で始まり、「法務省認可通達書」なので返事がない場合には、「民法特例法」に基づいて裁判所から出廷の連絡があり、「判決後には給与、動産・不動産物の差し押さえ等の強制執行をさせていただくことになります」という文面である。

 そして、はがきでの通達なので、「プライバシー保護のため、請求金額・お支払い方法等は当局職員にご確認ください」と電話での連絡を求め、代表番号と相談課など複数の電話番号が記されていた。差出人は「法務省認可法人(財)日本債券管理回収事務局」とあった。

 友人は初め、「出廷」とか「強制執行」などという言葉から「本当だったらどう対処しよう」と、かなり不安を感じていたようであった。相談を受けたので、調べてみることにした。よく読み返してみると、はがきの文面には不可解な用語が多すぎるので、まず法務省に電話して確認してみた。「法務省認可通達書」や「法務省認可法人」というものは存在しないし、「民法特例法」なる法律もないという回答だった。

 さらに法務省の「架空請求」に関するホームページには、法務大臣が許可した債権回収会社は、「目隠しシールのないはがきや電子メール、携帯電話等での請求や督促を行わない」ことが明示されていた。また、これまでに詐欺を行った債権回収会社名一覧も掲載されており、数えてみると実に百三十六社に上っていた。

 ここまで調べてきて、友人もようやく気持ちが落ち着いてきたようであった。でもまだ、不安材料が残っている。一月十七日付の本紙社会面に載っていたように、もし、簡易裁判所の「支払督促制度」による「支払督促」が送られてきた場合、そのままにしておくと差し押さえなどの強制執行を受ける恐れが出てくる。しかも、この督促が届いたときには、裁判所からの正式な通知かどうかを裁判所に確認し、仮に正式なものであった場合には「異議申し立て」をしなければならないからである。

 さて、本県における昨年一年間の「振り込め詐欺」による被害総額を県警の担当の方にまとめていただいた。なんと、総額四億六千五百万円にも達しているという。そのうち、「おれおれ詐欺」による被害は百六十九件で約二億九千万円、「架空請求詐欺」では約一億二千万円(百四十九件)、「融資保証金詐欺」では約四千五百万円(九十二件)となっている。

 こうした「詐欺」に遭わないためには、まず、自分ひとりで判断するのではなく、家族や友人に相談したり、県や県警などの相談室に連絡して、事実を他者と確認し合うことが大切なことである。

 ますます巧妙化しつつある一連の「詐欺」に適切に対処するためには、私たち一人ひとりが普段から家族や友人との信頼のネットワークを強化しておくほかに方法はない。

(上毛新聞 2005年2月17日掲載)