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高崎経済大学地域政策学部教授 生沼 裕さん(東京都在住)

【略歴】栃木県生まれ。89年に東京大法学部を卒業し、自治省(現総務省)入省。環境庁、内閣官房、大阪府などの勤務を経て自治大学校教授。04年4月から現職。

自治体HP


◎充実感の差は意識の差

 総務省の調べによると、わが国のインターネット利用者数は二〇〇三年末で七千七百三十万人(一九九八年末・千六百九十四万人)、世帯普及率は88・1%(同・11・0%)と、その利用環境は急速に拡大してきており、このような中、昨年四月一日現在、都道府県は全団体、市町村は三千八十六団体(全体の98・8%)と、ほとんどの自治体がホームページ(HP)を開設している。ここ数年、国の機関はもとより、自治体のHPも使い勝手や提供情報の内容等で非常に充実してきたという印象が強い。

 例えば、三鷹市ではトップページを市民、訪問者、事業者向けに分け、事業者向けでは「入札・契約情報」が一番目につく場所にあるなど、使い勝手に工夫が見られる。また、市民向けでは「三鷹を考える論点データ集」「三鷹を考える基礎用語事典」など提供情報量が豊富なのに加え、基本計画改定の際には、インターネット上でシンポジウムの映像と議事録を公開し、意見を書き込む「eシンポジウム」や、市民が電子地図上にまちの魅力や課題を投稿し、電子会議室で意見交換を行う「eコミュニティーカルテ」を開設するなど、ITを活用した市民参加に力を入れている。

 下関市の場合は、行政評価システム「ふくふく通信簿」を行政評価に関する用語解説付きで公開している。また、「介護保険」の説明が内容豊富で分かりやすく工夫されているなど、予備知識のない利用者を想定しての「学習」機能を伴う情報提供といった配慮が施されている。議会の電子化についても、三重県などのように、本会議や委員会の審議日程・審議項目、議事録の公開はもとより、会議のインターネット中継や録画の配信など、動画のコンテンツも充実してきている。

 このような自治体HPの進化は、住民サイドからみれば大変喜ばしいことである。ただ、残念なことに、現時点においては自治体によってその充実度にはかなりの差が見られ、また、自治体HP内の各部局・各課などセクション間においてもばらつきが見られる。

 自治体HPの充実度の差は、住民への説明責任に対する各自治体・セクション・職員の意識の差を如実に示したものであり、各自治体の住民自治への取り組みの姿勢等を評価する際のバロメーターの一つともいえよう。全国の自治体が住民参加の充実や住民との協働をうたっている今日、真に住民本位の行政を実現していくためには、行政情報の積極的な公開と住民サイドに立った分かりやすい形での提供等により、説明責任を十分に果たし、行政運営の透明性の向上を図っていくことが必要不可欠である。

 国は「行政情報の電子的提供に関する基本的考え方(指針)」(二〇〇一年三月策定、昨年十一月改定)の中で、各省庁が提供する情報内容と留意事項(時宜を得た提供と内容の最新化、国民等との間の双方向の情報流通など)の詳細を定めて実行に移しており、参考になろう。今後の地方自治体における行政情報提供の一層の充実を期待したい。

(上毛新聞 2005年3月2日掲載)