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新生会・地域生活支援センター所長 鈴木 育三さん(榛名町中室田)

【略歴】立教大大学院応用社会学研究科修了。聖公会神学院専任講師を経て、84年から社会福祉法人新生会理事。地域生活支援センター所長。群馬社会福祉大短期大学部講師。

芽生えの季節に


◎生きていることに感謝

 厳寒に耐えたコブシ、モクレンなどが、つぼみを膨らませています。モクレン(マグノリア属)は一億年前から地球に存在し続けた植物といわれています。

 地球の生命は、宇宙的奇跡に近い出来事として四十六億年前に誕生したそうです。以来、連々と継続してきた多様性豊かな地球生命のごく一部であるのが私たちの「いのち」です。季節のめぐりとともに、自然の生命は循環していきます。わたしたちは、この生命の母なる自然から多くの慰めと癒やしを、ときには脅威を受け続けてきました。

 昨年、ノーベル平和賞を受けたケニアの女性、ワンガリ・マータイさんは、アフリカの荒廃した土地に「木を植え続けることは、平和と希望の種子を生み出す」と信じて、『グリーン・ベルト運動』を行っています。

 自然と人間の共生・共存は、人と人との間に平和を生み、豊かな生命力を育はぐくみます。ジャン・ジオノ著『木を植えた人』を思い起こす人もいるでしょう。「緑」は、「平和」の色です。しかし、幾多の戦争・紛争は、人と大地に破壊・荒廃をもたらしてきました。マータイさんは「多くの戦争は資源の獲得をめぐって起きる。わたしたちが持続可能な方法で資源を管理すれば、紛争は減る」と、環境保護運動が平和につながると指摘しています。

 今から半世紀も前、アフリカの奥地で医療活動に尽力し、ノーベル平和賞(一九五二年)を授与されたアルベール・シュバイツァー博士は、〈生命への畏い敬けい〉の思想を提起しました。地球生命は、生きとし生けるものが互いに「いのちの共振れ」を起こしつつ、未来に向けて「生命の旅」を続けています。

 しかし今、地球温暖化、環境汚染物質による自然生態系の破壊が進行しています。『沈黙の春』の著者レイチェル・カーソンは、彼女の遺作『センス・オブ・ワンダー(神秘さや不思議さに目を見張る感性)』で、次のように語りかけています。

 「もしもわたしが、すべての子どもの成長を見守る善良な妖精に話しかける力をもっているとしたら、世界中の子どもに、生涯消えることのない『センス・オブ・ワンダー』を授けてほしいとたのむでしょう。

 この感性は、やがて大人になるとやってくる倦けん怠たいや幻滅、わたしたちが自然という力の源泉から遠ざかること、つまらない人工的なものに夢中になることなどに対する、かわらぬ解毒剤になるのです」

 レイチェル・カーソンをはじめ、多くのエコロジストが警告しているように、人間中心の欲望を満たすために開発された人工物質によって、鳥の鳴かない「沈黙の春」がこないように知恵を用いなければなりません。あらためて生身の「いのち」(今、ここに生きていること)への感謝と、多様な地球生命への共感能力を希薄化・喪失させないようにしなければ、と思うことしきりです。

(上毛新聞 2005年3月6日掲載)