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NPO法人新里昆虫研究会理事長 小池 文司さん(新里村新川)

【略歴】東洋大卒。中学校教諭などを経て、すぎの子幼稚園、おおぞら保育園理事長。99年に発足し、03年にNPO法人に認証された新里昆虫研究会理事長。

里山と子供たち


◎潜在能力磨ける環境を

 豊かな水と緑に恵まれたわが国土は、太古の昔に住み着いた祖先たちが原生の自然を切り開き農的営みを始めて以来、自然と人間の相互作用により形成、維持されてきたのが里山である。身近な里山は、戦後六十年の間に大きく変ぼうしてしまった。近年、里山の自然は生物多様性を維持し、アメニティを確保する上でかけがえのない自然として、また日本の伝統文化を培ってきた農林業の営みの場として、貴重な資産であることが認識されるようになった。

 里山保全の取り組みも国や各自治体で進められ、里山保全条例を制定する自治体も現れて、里山保全活動を目的にNPO(民間非営利団体)などが各地で活発な活動を展開している。県内でも山間部を車で走ると、道路脇の里山が整備され、きれいな雑木林の里山が再生した所が見られるようになってきたのは喜ばしいことだ。

 新里昆虫研究会は、ぐんま昆虫の森に隣接する民有地の里山を借り受け、会員や中学生ボランティアなどの協力を得て再生活動を実施している。

 今の子供の生活や遊びを見ると、自然に触れ合う場や時間が極度に減少する傾向にある。そのため意図的、計画的に事業内容に子供たちが積極的に参加できるような方針のもとに企画している。また、里山の再生活動と合わせて、子供自身が楽しい山遊びや冒険的な場や空間として、子供たちの発想を大切にしたブランコやツリーハウス、道路などの施設的なものも子供と大人が一緒に汗を流しながら作っている。

 子供は作業を通して、大人の道具の使い方や手順などを学び取って自然と大人との会話も活発になる。かまを使った下刈りでは、最初は思うように使えず、泣きべそをかきながら挑戦する子供の姿もある。何回も何日も挑戦し、試行錯誤の中でかまの取り扱い方を体得していった感動体験は、子供の生きる力となって、次の挑戦的な活動へとつながっていっている。

 子供たちの里山の感動体験は、四季折々の自然の変化にも見られる。夏休み小学生自然体験教室では、里山にテントを張って一泊二日の共同生活をしながら昆虫調査や自然体験をしている。

 子供たちはテント張りやトイレ作りなど、生活する物は自分たちの手で生活環境整備を行う。また、自分で使用する水は持参し、水の大切さを体験させている。昆虫標本作りでは、自分で捕まえてきた昆虫を標本にする。涙を流しながらの標本作りで、命の大切さを実体験している。夜行性昆虫調査では、子供たちは偶然にも数匹のセミの羽化の瞬間を観察でき、自然の不思議さや神秘さを体験し、知的探求心を培うことができた。

 子供たちは里山の自然の中での遊びが大好きである。子供は里山の環境に主体的に働きかけ、自分で課題を見つけ、行動し、解決して行く力を潜めている。農耕民族の血を呼び起こし、潜在能力を磨くような環境が里山にはたくさんある。

(上毛新聞 2005年4月7日掲載)